『林檎とポラロイド』
良い邦題。
こういう作品が自分は好きです。
※罫線部下までネタバレなし
陰鬱した色彩表現。
レトロなガジェット。
流れ続ける日常感。
その挙句、記憶はないが
どうやらりんごが好きな主人公、だと…。
大好物すぎる😌
監督を務めるのは、『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイターや、『女王陛下のお気に入り』のヨルゴス・ランティモスの助監督を務めていたクリストス・ニク。
流れる日常感はリンクレイターらしく、
醸し出す不穏な雰囲気はランティモスらしい。
優秀な監督の元で育ってきたことがわかる作風。
(最初の主人公の奇行さえ見落とさなければ)
伝わってくるテーマにはランティモス節からは
感じることの出来ない一種の温かさを感じます。
良作です。未鑑賞の方は
ぜひチャレンジしてみてください。
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冒頭の邦題の話に戻ります。
『林檎とポラロイド』
この邦題が表しているのは
端的に"記憶"と"記録"
ぼーっと観てると主人公は流行りの奇病で
記憶喪失となり、「新しい自分」になるための
プログラムに参加していくことになるんですけど
だんだん「???」となるシーンが
増えて来るんですよね。
冒頭、壁に頭を打ち付けうなだれる主人公。
一つだけどうしてもこなせないプログラム。
あることから急に食べなくなったリンゴ。
そこで気づくんですよね。
記憶喪失になったんじゃなくて
どうしても記憶を喪失したいことがあると。
消したい過去があるのだと。
彼にとっては、怪しいプログラムにすら
縋りたくなるほど辛かったんだろうなあ。
だからこそのラストシーン。
リンゴ(記憶)と向き合う
彼の姿が切なくも温かくて。
「消したい過去ほど
その人にとっては重要なもの
なのかもしれないよ」
そんなメッセージ性のある本作。
オススメですよ👍
(おまけ)
本作の”記録“というものなぞらえて、ではありませんが昔バイト中に書いていた映画レビューをしていたノートを見てみました。
少し日やけした無印良品のノートから
チラシの裏書きがパラパラと落ちる。
最初の数ページだけ綺麗に書いて、
あとは殴り書きの汚い字。
自分の性格と嗜好がよく分かる。
映画が好きだった頃の記憶と、記録。
えっもい。