タスマニア

映画大好きポンポさんのタスマニアのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
4.0
2021年58本目。

「ポンポさんが帰ってきたよー!!」
映画の現場を形作る脚本家や監督の存在そのものが太陽のようで、場をパッと明るくするシンボルなのは格好いいな。
ポンポさんは年齢も正直いまいち分かんないし、容姿も幼女だから、クリエイターというよりは "映画の妖精" みたいに思えた。
映画の題名にジーンではなくポンポさんが入っていることからも、主役はポンポさんなんだろうか。
ジーンとナタリーのサクセスストーリーが主題にも見えるけど、"それぞれのアリアを探す" というところから、もっと開いたテーマを持った映画なんだろうな。

とりあえず、映画好きなので一度は見ておかないと!っという使命感で見始めたけど、見てよかったなぁって思えた良い映画だった。

結構ファンタジー色強い見た目だけど、一方で結構鋭くてリアリティのある切り口やセリフにハッとさせられたところもある。

特にポンポさんがジーンを見出した最大の理由には大いに納得した。
幸福感や充足感が創造性を削っていくという話。社会への反骨精神・ハングリー精神、クリエイティビティを研ぎ澄ます孤独感。
勝手なイメージだけど、ドキュメンタリーや取材映像で自身について語る宮崎駿や庵野秀明を見て感じた共通点。すごく腑に落ちる。
「天才クリエイターは偏屈な人が多い」という理解より、「偏屈な人格形成を強いられるような環境下だからこそ、クリエイティビティが研ぎ澄まされてきた」という理解。

また、ジーンが終盤の素材を編集する件で言っていた「他の全てを捨てる」「何かを犠牲にする」というところも、すごく合点がいく。
世の中で大成した天才の多くが友人や家族やいろいろなものを犠牲にして生きているイメージはやっぱりあるもの。

あと映画において「女優を魅力的に映すこと」を大事にするポンポさんの戦略も結構合理的で、マーケティングの匂いがして好き。
ポンポさんはクリエイターであるけど、同時にビジネスマンでもあった気がする。

あと、「日本のアニメーションだけど、敢えて舞台や登場人物を海外(まぁ米国と考えて良いよね笑)にした理由はなんだろう?」って自分なりに考えてみた。
1つは「ニャリウッド、ニャカデミー賞」といった映画におけるわかりやすい聖地、権威を登場させたかったからかな?
名前がやや猫の擬人化世界みたいで笑えるけど、日本を舞台にすると賞の権威に説得力が足りないもんね(悲しい現実だけど)

あと、もう1つは "アランによる革命" がもたらすセンセーショナルな結果の気恥ずかしさを無くすためかな。
なんか、頭取による「見せてもらったよ」とか、「こりゃ負けたよ・・・、融資決定だ・・・!」みたいなノリって、海外の映画だと受け入れられるけれど、日本国内の映画で描かれると急に気恥ずかしくなるもの。
これは完全に個人的な意見だけど笑

あと、「伝説の名優の10年ぶりの復帰作!」「主演女優は大抜擢の新人女優!なんと脚本は彼女への当て書き!」なんて最高じゃん。
実際の世界でそんなプロモーションされたらテンション上がる。
最近だと「騙し絵の牙」が大泉洋への当て書き。
ちょっと前だと「リップヴァンウィンクルの花嫁」は黒木華への当て書きらしいけど、作品自体の出来とは無関係にやっぱり役にはズバッとハマるもんな。俳優冥利に尽きるだろう。

やっぱり自分映画好きだわって感想と、映画作る側の人へのリスペクトも高まった。
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