ゲイリーゲイリー

ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-のゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

3.0
家族というものは、必ずしも良い面ばかりではない。
愛すべき存在であるが故に、時折その存在が呪縛のように家族を巻き込んで引き離さない。
しかし、家族であるが故に簡単に縁を切る事もできない、そのもどかしさや歯痒さが本作には詰まっていた。

そういった劣悪な環境下で抗い続けた、主人公J.Dとその姉はとても逞しい。
J.Dを真っ当な人間にすべく、徹底的に厳しく指導した祖母の忍耐力も凄まじく感心すると同時に、彼女が抱える贖罪意識を思うと少し辛くもあった。

J.Dの母親役を演じたエイミー・アダムスの演技力は相変わらず素晴らしかった。彼女が抱える過去の傷と、それを言い訳にしてしまう自分への不甲斐なさ、それら全てが混在した不安定な情緒。そのような複雑な人物を完璧なまでに演じていた。
(本編終了後、本人映像が流れるのだが、エイミー・アダムスとグレンクローズは特に本人たちに似ていた。)

家族であり続ける困難さと、それでも家族は素晴らしいと思わせる、家族であることの光と闇の両方を描いた本作。
J.Dの人生を見ることで、産まれた環境は関係なく、自分自身で未来を選択すべきだと奮い立たされた。