滝和也

セブンの滝和也のレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.0
7つの大罪。
大食、強欲、怠惰、
肉欲、高慢、嫉妬
そして憤怒…。

キリスト教7つの大罪に見立てた猟奇殺人事件を2人の刑事が追う。定年を7日後に控えた老刑事、モーガン・フリーマン、新任の若き刑事にブラッド・ピット。既に古典的名作の部類に入らんとするミステリー・サスペンスの金字塔。今で言うイヤミスの代表作。やっと見る気になりました。

老成には冷静と知恵、諦めが、若さには熱情と勢い、希望が。その対比を持って、猟奇殺人鬼に迫る部分にシナリオ・演出の巧みさがありますね。もちろん2人の好演があってこそですが。バディものとしての側面としても一級品でしょうね。

ただこれだけでは、名作には成り得ない。見立て殺人のショックさはあるものの、子供の頃に見た金田一のほうが余程のショックです。やはりあの結末あってのことでしょう。そして、老成してから見たコト、そもそも失敗なんです(T_T)…。若い内に見るべきなんです。この作品は!だからもしもまだ見てない若きフォロワーさんは早めに見ることをオススメしますし、ここから先はネタバレはしませんが、傾向があるので、見ないでくださいな…。









この作品、感情移入がどこにされるかで衝撃度が変わります。老成してから見るとモーガン・フリーマンに行きますよね。そして諦めにも似た冷静な視点で全てを俯瞰で見始めると、緻密に置かれた布石、回収されない布石に気づいてしまいます。何故そのシーンがあるのかに気付くと衝撃が下がります。ああそうかと諦めがつきます…。また7つの大罪を知っていると尚なんです。モーガン・フリーマンになると調べちゃうんです。もしくは知っている。私、薄々知ってました…。残りなんだっけ…と(T_T)。こうくるだろうなと早めにわかる。またはそうなる様仕向けているんです。

フィンチャーはそれも分かって撮っている。それが分かっても、感性の若い方は、感情移入先がブラピですから、わかっても、希望を持つことも…。まさかソレはヤメてくれと…。結果感情に傷跡、爪痕を残せることも…。

つまり気付こうが、気付かまいがどっちでも良いんです。ラストに向けて、動悸が激しくなり、爪痕さえ残せれば…。その衝撃の大小は気付きの差になります。楽しむなら衝撃はでかい方がいいですから…。ただある意味恐ろしい作品の上、恐ろしい監督なんですよ。緻密なシナリオでありながら、気づかれても爪痕を残してやると言う、ある意味猟奇的です…。

爪痕を残すためのコンセプトとシナリオ、そして周りに無関心であり、雨が降りしきるダークな都会のステージ。更に誰もいない無味乾燥な砂漠。そこにもはや希望はありません…。
滝和也

滝和也