2022/11/20鑑賞。71点。
個人的にはかなり好きな部類の作品。
ポール・ハギスの監督した【クラッシュ】という作品に似ている。【クラッシュ】では、普段は差別主義者の警察官であるマット・ディロンが実は市民を守るために職務を全うする人物で、清廉潔白な警察官であるライアン・フィリップが自分でも気付かないうちに人種差別をしていた、と最後の最後で明らかになる作品。今作の2人の警官も非常に似た描き方がされている。
本作でいうと、少しずつアラブ系への偏見がなくなっていき人間性を取り戻すマイク。その一方で、極限状態が続くことにより徐々に自覚していなかった凶暴性や暴力的な一面が顕になっていくジェンス。
〈あらすじ・ネタバレあり〉
舞台はデンマーク。
仲間想いだが暴力的な性格のマイクと正義感の強い真面目なジェンスは、アラブ系が集まって暮らすスヴァルガルデン地区の巡回を任されている。
マイクは、アラブ系が自分に対して挑発的な態度を取ることに腹を立てており、その怒りがアラブ系の若者に対する偏見や暴力的な言動に繋がっていた。
つい先日、タリブというアラブ系の青年を複数の警官が暴力的に取り押さえて逮捕した。
タリブはスヴァルガルデンに住んでおり、住民の警察官に向ける視線は厳しいもの。
マイクとジェンスが、警察車両にペットボトルを投げつけた青年・アモスを逮捕した直後のこと・・・警察車両にタリブが病院で死亡したと報道される。
マイクとジェンスは住民たちから命を狙われ、アモスもそれに巻き込まれる。
3人は共に身を隠しながら行動していく。
タリブが逮捕された現場にいたジェンスは、同僚たちの逮捕の仕方に問題があったと告発するつもりでだった。そのこと知ったマイクは「警察官は互いに庇い合わなければならない」と言いくるめようとするが、ジェンスが取り合おうとしないため殴り合いに発展。
マイクの度の過ぎた攻撃に命の危機を感じたジェンスは、アモスを連れて一緒に逃げる。
その過程でジェンスは、自分でも気付かないうちにどんどん過剰な暴力を振るうようになっていく。
一方ジェンスとアモスとの殴り合いで大怪我をしたマイクは、アパートの一室に逃げ込んむ。その部屋には、2人の子どもを育てるアラブ系シングルマザーのアビアが暮らしていた。
彼女に治療してもらったマイクは、自分がアラブ系を一括りにして怒りを抱いていたことに気付き、深く反省する。
実はアビアは、アモスの母親だった。アモスの携帯を持っていたマイクは、息子を傷つけて携帯を奪った危険人物と彼女に誤解され、家を追い出される。
アビアとの一悶着を聞きつけたアラブ系の住民たちに囲まれてながらも、エレベーターで逃げるマイク。そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、イザというアラブ系の少年だった。イザは、普段からマイクのことを挑発するような言動を繰り返していたが、実際のところは警察官に憧れる正義感の強い性格だった。
そのことを知ったマイクは、イザの提案を受け入れて彼に助けてもらう。
以前からマイクと対立関係にあるアラブ系ギャングのオスマンは、暴徒化する住民たちを焚き付けて彼を殺害しようと画策。オスマンに足止めされて質問攻めされたイザはマイクの居場所を隠し通そうとする。しかし、オスマンはマイクの居場所に気づく。追い詰められたマイクは機関銃を持ち出してオスマンらギャングに発砲しまくり、逃げ損ねたオスマンを殺害しようとする。そんなマイクを止めたのがイザだった。
イザが止めてくれたことにより、冷静になったマイクは自分が今しようとしているのがただの殺人だと気付き、「2度と俺の前に現れるな」とオスマンに警告して解放する。
暴徒化したアラブ系たちはスマホを使って、マイクとジェンスの居場所をリアルタイムで報告し合っている。当然イザのスマホにも情報が来るので、その情報を使ってジェンスと落ち合うことに。
だが、そこで悲劇が起きる。
ジェンスが、突然飛び出してきたイザを暴徒と勘違いして射殺したのだ。
「刑務所には行きたくない・・・」
ジェンスのその言葉を聞いたマイクは、証拠を偽装することを決意。イザを暴徒の1人に仕立て、ジェンスは自衛のために引き金を引いたシナリオを書く。
暗がりに身を隠すアモスを見つけたマイクは、「お前は何も見てなかった。母親のところに帰れ」と。
アモスは帰宅し、母・アビアと再会を果たす。
マイクとジェンスは協力しながらスヴァルガルデンから脱出しようとするが、暴徒たちの迫ってくる声がすぐ後ろから聞こえてくる。
「自分は報いを受けるべきだ」と考え直したジェンスは足を止め、暴徒たちに嬲り殺される。
マイクは振り返ることなく走り続け、スヴァルガルデンを脱出することに成功。
マイクの目の前に広がるのは、スヴァルガルデンを包囲する武装した大勢の警官の姿だった。
※作中では描かれていないが、この後警察が暴徒を鎮圧するだろう。その過程で再びアラブ系の死傷者が出て、さらなる対立が生まれると予想される。
