アネモネ

声もなくのアネモネのレビュー・感想・評価

声もなく(2020年製作の映画)
3.8
住む世界が違う、なんて話じゃなくて
完全な格差社会の話だと思いました。
誰も悪くない。
生きていれば他者を思いやれない時もあれば傷つける事もあります。
ただ、産まれた環境が違う。
それは選べないもの。
喋れないのは、つまり社会へ反発する手立てもないって言う事で、テイン達が住む家のようにまさに行き止まりの世界に生きるしかない者の象徴で、抜け出す術さえ知らない人だって居ると言う事なんじゃないかと思いました。

今まで生きてきた世界しか知らないテインだって人を信じるとか助けたいとか相手を思いやるって言う感情を知った。
チョヒも今までにない時間を過ごした。
けれど、チョヒは逆にどう振舞って生きていくかを身につけてしまったのかもしれません。
そしてこの映画の終わり方は、
チョヒの事は誰も責められないし、
テインもやはり抜け出す術を知らない者はこのまま走るしか、生きる道はないのかと絶望的な気持ちにさせられました。

それでも本当にあった、ふとした温かな時間と経験が、この先テインや妹、そしてチョヒの心の中に残っていて欲しいと思いました。
アネモネ

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