俳優でもあり演出家でもあった家福は、妻をくも膜下出血により突然失う。
その二年後、広島での演劇祭での演出を以来され、出張先の専属ドライバーとして雇われたみさきと出会う。
重層なようで実はわかりやすい映画、というのが短評だろうか。
登場人物の殆どが淡白で平坦な演技をするので、感情の機微が読み取りにくい。
が、その代わりめっちゃ喋る。台本読むような感じで無表情で喋るんだけど、自分の事とか他人の事をかなり話して説明してくれるので、しっとりとした、間のある邦画特有の絵作りに反して誰それがどう考えているかで混乱する事がまずない。
それを三時間もかけてじっくりとやるのだから、見ていると色んな意味で疲れてくるが、不思議と理解不能ではなく、スッキリと腑に落ちた形で映画館を出られる。とはいえ三時間はやっぱり長いって。久しぶりにお尻痛くなった。
プロローグである妻との死別になんと一時間近くやる。家福の喪失感、そして妻への愛情と不信感を描くのには十分すぎる時間で、たしかにこの映画でこういう描き方をしたいなら必要な尺だったんだろうけどやっぱり長い。ちょっとダレる。
ようやく本編に入ると、演劇祭の監督、みさきとの交流、妻の不倫相手だった男との邂逅などで、多くのドラマが並行して進んでいき、思った以上に退屈する事はなかった。けれども、絵面がムスッとした人がただただ喋り続けているのばかりなので、お尻の痛みで我に返る場面も多々あり、悩ましい。
激しい面白さを求めるような映画でもないと思うし、これはこれで良いのだろうが、なんだかもうちょっと上手くやっても良かったんじゃと思いつつもこれでアカデミーで国際長編映画賞取れたんだから突っ込むのも野暮……いや、でももうちょっと何とか……。