日尭太郎

エターナルズの日尭太郎のネタバレレビュー・内容・結末

エターナルズ(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

遙か太古から人類をディヴィアンツの驚異から守り続けていたエターナルズの10人は、ディヴィアンツの消滅以降、互いに離れて暮らしていた。
しかし、滅ぼしたはずのディヴィアンツが再び現れ、メンバーの一人のセルシは対抗の為に再びエターナルズを結集しようと奔走する。

MCUの中ではかなりスケールの大きい作品となっていて、主要人物の多さも相まって群像劇的な様相になっている。一作前のシャンチーが正統派に進化したオリジン映画だけあって、今作の捻りが効いた構成はかなり新鮮味があった。
集団としてGOTGともきっちり差別化できているのも大きい。あちらはならず者としてのチームだが、エターナルズはそれぞれ思想や立場が明確に違っており、それぞれ個別の動きが楽しめるチームだ。中には対立に近い関係もあり、サスペンスとして機能しているのも得点が高い。

監督はクロエ・ジャオ。抜擢当時はまだ表立った功績はなかったが、今やアカデミー賞監督。過去作を見てみると、とても娯楽アクション映画を撮るようなイメージには見えない……。しかし、蓋を開けてみれば、遠景を撮る上手さを活かした演出、幽遊白書のファンという事もあって、各キャラの能力面の差異化やアクションのキレなどは公開前では予測がつかないほどキマッている。戦闘役、補助役など役割がしっかり分かれている上でどのキャラもその能力を適切に活用している様はまさに日本の能力バトルものの息吹を感じさせる。マッカリの高速移動アクションはピエトロと同等の能力なのにかなり魅せ方に外連味が効いていて個性が確立出来ていたのも腕を感じさせる。

そして、映画を語る上でやはり欠かせないのが最大のテーマの一つである多様性だ。エターナルズはセレスティアルズによって創造されたアンドロイドのようなものであり、その設定ゆえに彼らが外見や嗜好が異なっていても、同一の出自という観点からいちいち人種間のアレコレを説明する必要もない。彼らは自然体でお互いに接する事が出来るから、説教臭さとかわざとらしさがない。ここはうまく設定したと舌を巻いた。

さらに、エンドゲーム後の世界を俯瞰し降り立つという視点においてエターナルズは適切であり、この作品からMCUに入門するのも全然可能なフラットさがあったのも素晴らしい。エンドクレジットで今後の新キャラ達が示唆されているのも入門編としての狙いがあったようにも思う。

総じて、アイデア、演出、ストーリーが噛み合ったシャン・チーとはまた違うオリジン映画の可能性を見た気分だが、気になる所も点在している。
基本的にエターナルズは人間型であるが、彼らが総じて人間型であるという事、同じ出自のディヴィアンツは特に見せ場なく退場した事などは脚本の限界を感じた。
さらに言うならば、ここまで多様性に注力した作品、作品の評価は別にして彼らの中で「どんな人間がいないのか」という事はしっかりと意識しておくべきとは強く感じた(答えは自分なりに見つけているが、いま言うべきことでもない)。
日尭太郎

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