ゲイリーゲイリー

ザ・ホワイトタイガーのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

ザ・ホワイトタイガー(2021年製作の映画)
3.0
インドに根強く残る階級制度や貧困問題を描いた、成り上がりクライム作品。
本作のユニークな点はインドの問題のみならず、アメリカの問題をも描いていた部分だ。
発展途上国が、必ずしもアメリカのような先進国のやり方を模倣するわけではない。
白人流ではなく、黄色と茶色の人間の時代だと高らかに宣言していたのも本作の魅力と言える。

本作は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のような観客への語りかけの手法はとりつつも、そこまでコメディ要素はない。
むしろ個人的には、社会構造の問題を浮き彫りにする描き方に「パラサイト」と近いものを感じた。

また、主人公が格差社会や貧困という檻からの脱却のため、とった行動は全面的に肯定することはできない
それでも心のどこかで、よくやったと思ってしまう自分がいた。

社会が変わらない限り、その檻から抜け出すための方法はルールを無視するしか残されていないのだろう。
そこに至るまでの主人公の生い立ちや経緯などが丁寧に描写されていたため、いつの間にか主人公に同情してしまっていた。
(「ジョーカー」の時と同じ。)

主人公の行動には賛否両論あるかもしれないが、少なくとも彼は行動したのだ。
檻に閉じ込められていると分かっていながらも、何もできずに終わるのだけは勘弁してほしいと強く思わされた。