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ブレット・トレインのTEPPEIのレビュー・感想・評価

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)
2.8
伊坂幸太郎の「マリアビートル」を下敷きにハリウッドで製作された、「ブレット・トレイン」。すっかり売れっ子監督のデビッド・リーチ監督×ブラッド・ピットがタッグを組んだ。「デッドプール2」ですでにお二人は仲良いみたいなので、本作を鑑賞する人は「デッドプール2」と「ザ・ロストシティ」の2本を見ておくと小ネタがめちゃくちゃ面白くなることだろう。

なにかと騒がれているホワイト・ウォッシングについては、正直ナンセンス。ジョーイ・キングの言う通り、白人が有色人種を演じることの何が問題なのかは分からない。その逆も然り。いよいよ多様性の境界線というか、多様性の曖昧な部分が映画業界を何かと追い込んでしまっている気がするのが悲しい。第一、そこまで言うなら日本の映画業界も伊坂幸太郎ワールドを予算かけて世界に誇れるものを作れば良いのにさ…。そんな悲しい話を一蹴してくれる「ブレット・トレイン」は、キャストたちの素晴らしいパフォーマンスと、ハイテンポ・アクションで駆け抜けてくれるが不実性の多い脚本とガイ・リッチーやタランティーノのような仕掛けを表面的になぞって物足りない印象もある作品だ。

近未来東京や新幹線のビジュアルは中々面白く、「G.I. ジョー」に出てきそうなヘンテコなアジアン・テイストは、色彩豊かな映像で一つの芸術として確立していた。上野だけ現代的というか、まんま上野だったのでそこも笑ってしまう。全体的にはよくある閉鎖空間で起こるバイオレンス・アクションで、正直豪華キャストじゃなければ前半の展開はかなり退屈だっただろう。キャラ立てに使う時間が多いわりには、いまいち乗り切らず、途中までは「スナッチ」やガイ・リッチー作品を彷彿させる演出もあったが、英国映画人たちの持つ独特なクロス・カッティングよりも、大味なアメリカ映画が強すぎて個性や、緻密さには欠けていた。

ブラッド・ピットをはじめ、アーロン・ジョンソン、真田広之、マイケル・シャノン、ジョーイ・キング、ブライアン・タイラー・ヘンリーが集結し、画面はずっと華がある。オズで人形していたり、ホワイトハウスオタクで旗振り少女していたジョーイ・キングが殺し屋やっているのだから、なんか感慨深い。バイオレンス・アクションはさすがデビッド・リーチとだけあって見やすいし、迫力もある。根本的に問題なのは脚本だと思うが、捻りをきかせているようで物凄く強引。松浦さんの字幕も凄い日本語が古臭くて嫌だったが、豪華キャストにいまいち映画がついていけてなかったように思える。
日本をリスペクトしているのか、貶しているのかよく分からない演出もよく言えばカラフルでバリエーション豊か。笑えるシーンも多かったのも確か。
新幹線もそうだが、映画館も然り。終映後にパンの袋とか弁当の容器とかを座席や床に放って帰る輩はロクな奴じゃない。その光景を見て非常に残念。シネコンはこいつらから罰金取るか、鑑賞料金3倍にしてしまえ。それか真田広之に喝入れてもらうでもいい。
その真田広之が個人的にはブラッド・ピットを食ってしまうのではないかと思えるほど、良い役柄だったので海外で人気な理由が本当によく分かる。

総評として、「ブレット・トレイン」はキャストの演技とデビッド・リーチのハイテンポ・バイオレンス・アクションを劇場で楽しむだけでもチケット代の価値がある。ビジュアルもアクションも面白いが、物語の描き方や既視感のあるストーリーや設定には、些か不満を覚えるかもしれない。もう少しクレイジーでも良いぐらいだった。パブリック・ファイトがもう少し面白おかしかったり、殺し屋同士の掛け合いに深みがあると尚良かったので全体的には勿体無い印象が強い作品だった。それでも、劇場で楽しめることは間違いない。
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