マヒロ

ブレット・トレインのマヒロのレビュー・感想・評価

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)
3.5
運が悪いことに悩む殺し屋の“レディバグ”(ブラット・ピット)は、日本にて東京発京都行きの新幹線内でブリーフケースを奪うという任務を請け負うことになる。簡単なように思われた仕事だったが、車内には次々と殺し屋が現れ事態がややこしくなっていく……というお話。

伊坂幸太郎による日本の小説が基になった映画。このタイプの実写化作品は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』以来だと思うが、向こうはトム・クルーズ、こちらはブラット・ピットと、何気に主演に大スターが充てがわれているあたりそこそこ優遇されているように思える。

一応舞台も日本のままになっているが、最近のハリウッド映画にありがちな歌舞伎町あたりの風景を極端に誇張した猥雑な感じの東京や、名古屋を過ぎた辺りで最接近するめちゃくちゃな位置関係の富士山、霧とモヤに包まれてサイレントヒルみたいになった米原など、描写は清々しいまでにテキトー。全編に亘って出てくるマスコットキャラクターも日本っぽい要素の一つなんだろうけど、恐ろしくバタくさくてセンスの欠片もない造形で、細かいディテールとかにこだわるという姿勢は一切ない。
その大雑把さが良い味になっているといえばそうで、終始くだらない登場人物たちのやり取りなんかのノリを見ていると、これぐらい大雑把な方が映画の雰囲気には合っているかも。『モータルコンバット』に続き、一番良いところを持っていってくれる真田広之の使い方も良くて、終始ふざけ倒している周りの登場人物と比べて一人だけやたらシリアスな演技だが、そこがかえって可笑しみに繋がっていた。

『アヒルと鴨のコインロッカー』の伊坂幸太郎らしく、思ってもなかった要素が後々の伏線として使われたりと、ストーリー部分については早々に期待を捨てていた中でツイストを見せてくるので、単なるアホ映画に終わらない展開の面白さもある。
脳みそ使わない娯楽映画としては文句無しの作品だとは思うが、この手の「トンデモ日本」の映画は個人的にもう食傷気味なので、心の底からは楽しめなかったかな。リアルな日本描写を見せてくれとは思わないが、『キル・ビル』の頃ならまだしも、あの『アベンジャーズ/エンドゲーム』みたいなA級タイトルですらヤクザが刀持って暴れてるみたいな世界観で延々進歩が無く、今作もそんな調子なので期待を超えてこない。ハリウッドは色々とステレオタイプな描写を無くしていこうとしているけど、日本人=刀という安易なキャラ付けを止める方向で進めてくれると嬉しい……。


(2022.193)[28]
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