フラットでポップな映画だなと思った。泥臭くなりそうなところがそうならない。だからこそいいとも言えるし悪いとも言える。これはもう好みの範囲内だろう。なぜたけしは大学を辞めてまで芸人になろうとするか、葛藤が描かれない。動機が描かれない。だが、そのストラッグルのなさがこの映画のスマートさと似合っていて、たけしのひたむきさ（だけ）が結果的に浮き彫りになる作りになっている。そして、たけしが漫才という表現手段を得てテレビの世界で右肩上がりの快進撃を見せる展開と深見千三郎が落ち目になっていく展開が好対照を成すものとして整理され、それがドラマティックな展開として結実する。このわかりやすいひたむきさと好対照がこの映画の間口の広さ、観客の心を掴む魅力となり得ていることは確かだ。それにしても、こうした映画を見るにつけ「あの時代」が後付の理屈で整理され、パッケージされて商品化されていくのを感じ複雑な気持ちになる。むろん過去から学ぶことが無意味だとは全く思わないのでそこが剣呑なのだが。
