Aya

MONSOON/モンスーンのAyaのレビュー・感想・評価

MONSOON/モンスーン(2020年製作の映画)
4.1
#twcn

2回目/Jan.30.2022/桂川イオンシネマ

ほんとなんでこんなにイオンエンタやる気ないんだよ!
2週間で切ったアップリンク京都(T . T)

どうしてももう一度見たくて朝一の桂川イオンシネマまで行ってきたけど、やっぱり4人しか入ってなかった。゚(゚´Д`゚)゚。

なんで…なんで??
こんなに良い映画なのに。
妹を、無理やり引っ張って言ったのですが彼女にしては珍しく終わった後に興奮気味に「長く感じるのに終わってほしくないと思ったのは初めて」「あそこがよかった。ここがすごい」「画が癖に刺さる!」と矢継ぎ早に急き立てられた。

私も見終わって、もう一度見たいとまた欲が出た。

ああ映画との出会いって人それぞれ違ってその出会い自体も映画体験として素晴らしい記憶に残るんだな、と思いました。

初見に思ったことと初見の際には気付かなかったこと。
妹の話を聞きながら新たに感じたことと2回目を見て新たに芽生えた感慨。
見れば見るほど魅力が増える作品。

そういえばベトナムってチップの習慣あるのかな?という疑問を思い出したり、バイクにでっかい薄型テレビを紐で縛り付けて運んでるの?!と笑ったり、水道水を濾過するボトルに「日本以外は蛇口の水ひねって飲めないよね…」とよくわからない優越感に浸ったりw

ホーチミンからハノイまで列車で40時間もかかる、というセリフで「マジかよ…ベトナムってめっちゃデカいのかよ…」と見たのに驚いたり。

そんな苦い時間を一緒に過ごす、普通なら気まずくなり得てもおかしくない個室の知らない乗客にひょっとして母の姿を重ねたのかな?とか。

蓮茶のシーンは何度見ても視覚的な美しさにやられて涙が出たし今日はちゃんとKALDI的なお店でちゃんと蓮茶買って帰ったから今飲みながらこれを書いている。

一場面を切り取ったように見えて主人公のこれからの人生を想像させる映画。

そして、85分という短い尺にも関わらず省略されないカット。短い作品ではないと感じながら終わってほしくないとも思う。

そして2度目に見て感じたのはロマンス部分。元々は「母親の遺骨を撒く場所を探す」目的で幼い頃に亡命したベトナムの地へやってきたのに映画の決着はその部分には触れない。

それ以上にこらからの主人公の人生の予感、ロマンスの予感に想いを馳せて下から上へゆっくり上がってゆく彼らとカメラ。

その前に見せるあの表情。
何度も見たい。
何度までもきっと褪せない。

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「追憶と、踊りながら/Lilting」のホン・カウ長編監督2作目。なんと5年ぶり。

もうすぐ50歳に近づく年齢とは思えない"今"を体現し失うばかりの主人公を映画ないの周りのキャラクターを使い映画的にもドラマ的にも温かく包み込む監督。

ファーストカットの渋滞シーンてハノイだと思ったらサイゴン(正確にはホーチミン)なのね。

そして画面に映し出されるタクシーに乗るアジア系の男。

ちょっとね。
あまりパッとしない表情で窓の外をヘンリー・ゴールディングの顔の良さに頭がクラックラしました…。

わたしヘンリー・ゴールディング弱者だと思ってるんですけど今まで見た作品の中で一番ハンサムだったこの映画(T . T)
いつもよりめっちゃ痩せてない??

今まであんまり見る機会のなかった彼のタトゥーをダサいとか言ってすみませんでした。

わたしも両肩にタトゥーがあるからなんとなく仲間意識を持っちゃったんだよごめんマジで。
(お母様がマレーシア部族の出身でそのルーツの模様らしい)

アメリカやイギリスやシンガポールで白い肌に白い歯を煌めかせながら笑顔を振りまくヘンリーはもうみんなの憧れの王子様!って感じやけど、この湿気の多い東南アジアで短パンにサンダル、浮かない顔でタバコをふかす姿のセクシーさよ(T ^ T)

昨年はお子さんも生まれて健康的で美しすぎる妻と3人でもうトレッキングとかしたりしてるし私の推しの中でも群を抜いてヘルシーな人やわw

私生活はハピハピモード、スネークアイズは散々な言われようですがw
今作は"クレイジー・リッチ・エイジアン"と"シンプル・ファイヴァー"の次に2019年に撮った作品とのこと。
いや、2019年て日本にいたやん!と思ったw

"ラスト・クリスマス"の方が後だったんですね。

わたし知らないんですけどベトナムってチップいらないんですか??
ファミリー向けの高級アパートに泊まり近所をぶらぶら。

訪れたのは30年ぶりに会う従兄弟デヴィッド・トラン宅。
6歳になる娘と自分もお世話になったデヴィッドの母。
睦まじく暮らしている。

不在の娘の母親についての言及が当たり前のように無くそれを匂わせる雰囲気すら一切ないのめっちゃホン・カウっぽくないですか?

お土産のシーン声あげて笑ったww
いやいや亡命できなかった親戚へロイヤル・ショートブレッドってw
嫌味か買うの忘れてて空港で買ったやろ?!

"水を濾過するボトル"も同義ですw
そりゃベトナムは水道水飲めなそうだけどイギリスも全然飲めなそうですけど?!って蛇口捻った水がそのまま飲める奇跡の国日本人ツッこんだよねw

この映画は全編ベトナムロケで音声も同録がほとんどとのことでベトナムの街中、都会や田舎、市場や観光地、はたまたヘンリーの行動範囲である外国人が多い高級なコミュニティ地区やクラブなどの雰囲気がとても感じやすい。

そしてワンカットがとても多い。
印象的なのは従兄弟のアパートへ向かうシーンや電車での会話。

アパートは2回出てきますね。
従兄弟と自分家。
正直「階段登るの早くない?!」と思ったけどw

慣れない土地でウロウロしつつフレームアウトするヘンリー。
いつ頃撮影したのかな?とマスクの人を探す私w
息切れもせずフレームインしてくるヘンリー。

そしてなんとも言えないあのラストシーン。

ワンカットの使い方がうまいホン・カウとその長さに耐えうる演技が出来る才能ある俳優陣。

そして登場する最初はビジネスライクだけど、程よくフレンドリーでとても頭の良いアジア系女性の通訳。

節々にホン・カウ監督の作家聲を感じる演出とファクターに胸が、胸が、キュンとする!

ヘンリーは元々このベトナムで生まれて戦争後、収容所や香港などを経由し父と母と兄と家族4人でイギリスに移り住みます。

最近亡くなった母の遺灰を祖国に撒くために思い出の場所を探しにやってきた。
とても荷が重く、記憶の少ない彼にとってはよく分からない行動ですよね。

彼はゆかりの地を訪ねながらアパートで植物を育てたり父母の出身地であるハノイまで行く。
※サイゴンからハノイ電車で40時間くらいかかるから!

その表情から彼は両親の遺灰を撒く場所以外の"何か"を探しているように感じる。

そして到着してすぐ登場する出会い系アプリ(Tinder的なやつ?)で知り合ったアフリカ系のルイス。

ちょっと待って!
ヘンリー・ゴールディングって6ftくらいなかったっけ??
ってことはルイスって人めっちゃ大っきくない?!
この一時のロマンスの相手が登場するたびに「この人、ものすごく背が高いんじゃ…」ってずっと思ってたw

大人同士軽い会話と音楽とセックスを楽しんだ後、ルイスの少しの下心ありき(やと私は思ってるw)で再会する。

最初はお互いに多くは語らず嘘すら言っていたが2度目にあった時にはお互いについてお互いの家族やルーツについて会話を深め自分の泊まっているアパートに招くヘンリー。

この時、ニュージャージー出身のルイスは「最初は🇺🇸人だとバレるのが怖くて🇨🇦のバッチを着けていた。でも現地の若者は戦争や過去は忘れキャリアや未来に目を向けている」と少し強引に語る。
(ここの"ヤンキー"の訳し方って合ってるのかな?)

幼い記憶ながらベトナム戦争の被害者であるヘンリーは微妙や表情をするがやるこたヤる。

そしてヤることヤッた後、すぐにカメラ通話で甥っ子と笑顔を交わし両親が亡命したおかげで大学に行けた、と兄のヘンリーとやりとりをする。
(イヤフォンとかグチャグチャなタイプなんだ可愛い❤️と思いながらw)

クリスはヘンリーを駅まで送ってくれ従兄弟は父親が燃やしてしまった写真を探してくれる。
従兄弟家族がどんな苦労をしてこの国で生きてきたのか…律儀に借金の話を繰り返す彼の誠意さが光る。

デイビッド・トランさんなんか見たことある気がするんだけど…??
よくある顔なのかな??

ハノイで先にも書いた外国人向けのツアーを案内しているリンと親しくなり彼女の家業である蓮茶作りを見てみたいと言い手伝いがてら彼女の家族に触れる。

このシーン涙が出るほど感動する"一場面"だと思った。

美しい蓮の葉が清潔な部屋に溢れ家族総出で花びらを撒いだり茎を切ったりスープを作ったり何をしているのかはぶっちゃけよく分からないけれど、大きなスクリーンいっぱいこ蓮と彼女の家族そしてヘンリー家族がイギリスへ亡命した理由にみんなが笑ったあの瞬間、この映画とハノイの真の美しさに触れた気がしました。

監督インタビューで音と同様、照明もほとんど自然光を使ってたって書いてあったけどもしかしてここも?!

ここほんとに大好き(T . T)予告でもみれるのでぜひ!

ハノイから戻ってきたヘンリーは「遺灰を撒くのに適切な場所は見つからなかった」と語り従兄弟は「当たり前だバーカ」と。

なんのために父母が亡命してのか?
なんのために生前ヘンリー兄弟をベトナムから遠ざけたのか?いとこのデイヴィッドには分かっていたこと。

ちなみにヘンリー・ゴールディング演じるキットの兄がヘンリーって名前なのですがw

①イギリスのヘンリー皇子から名付けたのか?
②主演のヘンリー・ゴールディングから名付けたのか?

考えたんだけど②な気がすると友達も言っていてわたしも②かな?と思ったし①でもドラマがまた一つ生まれるよね。

帰ってきたヘンリーはリンからもらった蓮茶を持ってルイスのアパートを訪ねます。
そこで初めてルイスは自分がここにいる理由を語る。

ううう(T ^ T)
「ここは楽だよ」と語るルイスにもそんなドラマがあったなんて。
ヘンリーと上手くいきそう…

苦しいけれどとてもロマンティックなシーンでした。
ルイスの部屋に当たり前に茶器があったしw
この2人のカップルいいな…
(ハノイのアイツわたしでもよかったんじゃね?)

遺灰の決着をつけるべくラストに向かいルイスとの関係も最初に2人が考えていたより特別なものになった気がする。

でも!

あの!!

バーカンで見せたヘンリーの顔!!!

そしてその後のある場所での彼の目!!!!

(T . T)

(T . T)

(T . T)

わたしは戦争を知らないおばあちゃんになるつもりだけど今はそれも分からない。

彼らも戦争を知らない(記憶にない)おじいちゃんになるはずだったと思うんですよ。

でもそれは違う。
彼らは「戦争を体感した子ども」であったし知らないおじいちゃんにはなれない…。

そしてホン・カウ監督自身もカンボジアで生まれベトナムを経て幼い頃にイギリスへ渡った過去がある。
彼もまた「戦争を知っている」おじいちゃんになるはずだ。

もう雰囲気が好きすぎる!
時間の流れや人物をゆっくり捉えるカメラのカット。
そして心情を伝えようとしながらも掘り下げすぎない距離感。
俳優を全面的に信用した長回しの脚本と演習。

まさにホン・カウらしい映画としか言えない。゚(゚´Д`゚)゚。
2作しかみてないけど!

もう一回みたい。゚(゚´Д`゚)゚。
今すぐ観たい!
この作品の余韻にじっくり浸って過ごす時間が素晴らしく幸せ。

あれなのかな?
一つの作品をじっくり練るタイプなのかな?
だからか今作もそんなに予算がなかったらしい。

わたしは今作が地味だとは思わない。
特に"追憶と、踊りながら"よりもドラスティックだとすら思う。

なのになんで2週間しか上映しないの。゚(゚´Д`゚)゚。
もう一回観たいのに2週とも朝と仕事の終わらない夕方だし。゚(゚´Д`゚)゚。

しかもこんなに上映回数が少ないにも関わらずめっちゃ人入ってなかった…

なんでぇ???

パンフレットも作ってないなんてイオンエンタメひょっとして別の作品と抱き合わせで買ったやろ。゚(゚´Д`゚)゚。
絶対ソフト出してくださいよ?!

観てもらえば素敵さが伝わるのにいくらなんでも観れる機会が少なすぎるよ…。

マジで今週で終わりなら会社休もうかな?

※何も知らずに"無聲"とはしごしてしまい「なんで止めてくれなかったの?!」とはしごを知らない友人を責めたのはまた別の話…


日本語字幕:栗原 とみ子
Aya

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