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スーパーノヴァのdenizのレビュー・感想・評価

スーパーノヴァ(2020年製作の映画)
3.8
「今夜は晴天だ、望遠鏡を出そう。」

20年間連れ添ったパートナーが、不治の病を宣告されたら。
貴方は、ふたりは、最期のときをどう迎えるか。
そんなシンプルなストーリーを、コリン・ファースとスタンリー・トゥッチが溢れんばかりの愛情を携えて演じている。
イギリス湖水地方を舞台に、ほぼふたり芝居が続き、時にはカメラさえ置き去りに彼と彼の世界はまわる。
ふたりが醸し出す演技以上の空気感。
多くはない台詞の行間、カメラのアングルの外にまで感情が満ちている。
ピアニストの役どころなコリンが奏でる"愛の挨拶"。
(performed by Colin Firth!)
優しい、やさしい、愛に満ちた旋律が、やがて怒りと悲しみと遣る瀬無さに染まってゆく。
愛しい人の中から、自分の存在が消えてしまったら。
愛しい人が、自分の中からいなくなってしまったら。
その時じぶんは何を選択して、何を受け止めるのか。
残すものと残されるもの、それぞれの思いと想いのぶつかり合いの結末は。
これは、明日自分に起きるかもしれない物語だ。
家族、恋人、友人、推し。
急いで愛しい誰かに会って、大好きだよ!!と大声で叫びながらハグをしたくなる。
そんな綺羅星のような95分。

星は最後に大爆発を起こし、死を迎える。
その際にひときわ明るい輝きを起こし、初めて我々人類の目に映った星を、スーパーノヴァ[超新星]と称するらしい。
奇しくも今夜は7月7日。
今年は今作のふたりを想いながら、遠い星空の向こうを眺めようかな。
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