みっちゃん

クライ・マッチョのみっちゃんのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
4.1
監督・主演クリント・イーストウッド。

イーストウッド最晩年に至って、こんな境地に至ったのかな。
しみじみとした温かみの残る感動作だった。
老人も若者も痛みを抱えながら、前に進む人生を選ぶ。

家族を失った過去を持つ孤独な元ロデオ・スターで厩務員のマイクが、恩人の牧場主に頼まれて、幼いころに別れた彼の息子13歳をメキシコまで迎えに行く。
その母親というのがロクでもない女で、息子ラフォを愛していない。
ラフォは家に寄り付かず、闘鶏場に出入りしているという。
母親はしかし、父親である牧場主を憎み、息子を彼に渡そうとしない。
妨害をかいくぐってマイクはラフォを連れ出すが、追跡される。
その境遇のせいで、ラフォは人を信じていないと言う。
自分の鶏マッチョだけが相棒だ。

ロード・ムービーと思いきや、途中で潜伏する町でけっこう長逗留する。
そこが良い。
マイクの誠実さを見抜いたダイナーの女将が何かと彼らを助ける。
マイクも、町の牧場で野生の馬を調教するなどして、重宝がられるようになる。
ラフォには馬の乗り方を教え、彼の心を解いてゆく。
家族の愛に縁遠かった二人が、その町で生きがいと安らぎを見出して…

イーストウッドにしては甘いのだ。
つらくて胸が痛くなるシーンがほとんどない。
優しい人々や幸運に助けられて、ラストにたどり着く。
それが心地よい。温かい涙があふれてくる。
さすがにイーストウッドはよぼよぼおじいちゃんだが、“男”は健在だ。
ただの強い男とも違う、人間の本当の強さを示している。
ダンスシーンがジーンと来る。

マイクがメキシカンな服に着替えるというので、もしかしてあのポンチョに?と期待した。
も一つ、パトカーに停められて、車内を調べられるシーンで「ドラッグでも出てくると?」というセリフ。
クスッと、ニヤッとするシーンも楽しめた。

音楽も良かったな、カントリーブルース、哀調のメキシカン、良いね。
みっちゃん

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