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ハム・オン・ライのtetsuのレビュー・感想・評価

ハム・オン・ライ(2019年製作の映画)
4.0
機会があり、鑑賞。


[あらすじ]

とある田舎町で行われるティーンエイジャーたちの怪しいダンスパーティー。しかし、物語はそこから思いもよらぬ方向へ……。


[雑感]

他のレビューにざっと目を通しても、イマイチ全容が掴めなかった本作。

そのため、百聞は一見にしかず、鑑賞してみたが、それもそのはずな「なんじゃこりゃ?!」映画であった。


[ティーン映画のような前半戦]

個性豊かな男子・女子のグループが登場し、ひとつの場所に集まっていく前半は、まさしく、アメリカのインディーズ青春映画の様相。

キャッチーなハンドサイン(👍👎👉)でパートナーを指名するダンスパーティーの場面は特に最高で心が踊った。


[学生が配給?!]

前半の作風は、名の知れたところで言うと『エイス・グレード』や『ブックスマート』、より方向性が近いのは『アメリカン・スリープ・オーバー』、『ガール・アスリープ』といった印象を受けた。

ニッチな映画好きからすると、まさしく「グッチーズ・フリースクールが好きそう」な作品だが、実は本作の配給は学生団体が担当(←ここ重要)しているのもポイント。

ミニシアターを拠点に活動する映画チア部大阪支部では、これまでに日本未公開音楽ドキュメンタリーの『My Secret World』、『ティーンエイジ・スーパースターズ』を続けて配給しており、本作は、その第3弾。

7年目を迎える団体にとって、これはマジで大きな功績だと思うので、今後も続けていってほしいですね……。


[まさかの後半戦]

ここからは本作の重要なネタバレになる可能性があるので、今後、観る予定がある方、ここまでですでに興味が湧いた方はスルーで……。

序盤で青春映画の様相だった本作は、中盤に大きな転換を迎える。

ダンスパーティーの最中、ミラーボールのような謎の光を浴びた若者たちは、忽然と姿を消していく……。

海外のレビューではデヴィッド・リンチ的とも評された衝撃に、筆者は疑問符を浮かべ、一気に惹き込まれた。

「アブダクション?!(宇宙人による誘拐)」と思いつつ、『SUPER 8』や「ストレンジャー・シングス」のような物語を予想していると、待ち受けるのはさらに意外な展開。

本作では、それ以降、淡々と田舎町に住む大人(それも現状に後悔している模様)たちと残された若者の姿が映し出されていくのだ。

消えた若者たちの親、あるいは、若者たちの未来の姿のようにも見える大人たちだが、その正体は明かされず、本作では別の部分が重要視される。

「若者」と「大人」、「青春」と「過ぎた青春」、「町を出た者」と「町にとどまる者」との対比。

そこから、何を感じとるのかは人それぞれだが、明確にされない部分が多いからこそ、味わい深い作品だと思った。


[最後に]

本作が迎えるラストには大きな余白があり、まるで"ふわふわと漂う風船"のような余韻が残った。

そのため、好き嫌いが分かれる作品だとは思うが、そんな部分も含めて、観た後に誰かと話したくなる映画なのは確かだった。

上映機会が少ない本作だけに、是非、友人や知り合い、恋人などと鑑賞してほしい一作だと思った。

参考

『ハム・オン・ライ』限定上映&アフタートーク決定! | 神戸・元町商店街のミニシアター『元町映画館』
https://www.motoei.com/post_event/hamonrye/ 
(詳細はこちら。)

学生たちが関西のミニシアターを応援!「映画チア部」 | ラジオ関西 JOCR 558KHz
https://jocr.jp/cinema/20220722103726/ 
(映画チア部がイベントを紹介!後半には自分も登場しますが、それは後述。笑)
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