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SNS-少女たちの10日間-の一のレビュー・感想・評価

SNS-少女たちの10日間-(2020年製作の映画)
3.8
成人女性が12歳という設定のもとSNSへ登録すると、どういったことが起こるかを検証したドキュメンタリー

こういうおとり捜査のようなリアリティーショーが健全だとは思わないし、あまりにも生々しくてびっくりするほどモザイクも薄めという、男の自分から見てもかなりキツいシーンがあるので鑑賞には最善の注意が必要ですが、児童への性的搾取の実態を描いた映像としてしっかりと問題提起になっている素晴らしいドキュメンタリーだと思う
ただし予告以上のものはほとんどないので悪しからず

一応ちゃんとルールもあって
①自分からは連絡しない
②12歳であることをハッキリ告げる
③誘惑や挑発はしない
④露骨な性的指示は断る
⑤何度も頼まれた時のみ裸の写真を送る ※偽の合成写真
⑥こちらから会う約束を持ちかけない
⑦撮影中は現場にいる精神科医や弁護士に相談する

もちろん映画なので非常に滑稽な姿を露わにする男性だらけに編集されているんですが、相手が未成年となるとこいつらみんな馬鹿だなぁで笑って済ませられない大問題なわけです

最近も人気YouTuberが15歳の高校生にわいせつな写真を送らせて児童ポルノで逮捕されるというタイムリーな事件がありましたが、これは日本で撮影したとしても全く同じ結果になっているんじゃないかな

劇中も脅迫のような行為を平然で行うモンスターがいましたが、このYouTuberも口止めのために、学生証が一緒に映り込むようにして送らせるという卑劣極まりないことをしていたようですし、この手のやり方は児童ポルノ関係の事件では主流なのかもしれない

インターネットが普及した事による弊害と言わざるを得ないほど卑劣な行為で、手軽に知らない人同士がやりとり出来てしまうからこそ、正しい使い方では無く少女たちに淫らな言葉や映像を浴びせるモンスターが生まれやすくなってしまい、今では掲示板や無料通話アプリは恐ろしい児童ポルノ犯罪の温床になってしまっている

今現在存在しているのかはわからないけど、自分が高校生くらいの時は「斉藤さん」という無差別に選ばれた人同士が通話できるアプリが流行っていて、女性に下半身を見せたいが為にやってる人がめちゃくちゃ多かったことを思い出した
当時ですらそんな感じだったし、恐らく今はもっと簡単に未成年と繋がれるようなアプリもあるはず

そもそも12歳の役を演じて貰うためのオーディションの段階から既にほとんどの方が当時の性犯罪紛いの不快なエピソードを持っているという異常事態にもドン引き

恐らくですがいわゆるロリコンと言われる人々は相当な数存在していて、その大半は行動を起こすまでは至らないとは思いますが、ネットという身近な人には知られないという状況になると途端にモンスターと化してしまうのもゾッとした

巨大な撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋もかなり凝った作りだったし、挿入される音楽も不気味でぴったりだった(やたらと音量がでかいのは気になったけど)
顔のモザイクもただ全てを隠すようなものではなく、目だけを出すというより一層モンスター感が増す演出も良い
わんちゃんがおしっこをかけるというミラクルシーンは爆笑

とはいえ手放しに褒められるようなドキュメンタリーというわけではなく、まるで聖人のように扱われる一人の青年の件は違和感だらけだったし、実際にコラ写真を送っちゃうとか一線を越えてるようなことをしてるので、引っかかる部分がいくつかあったのも事実

だけど教材的な意味で、小学生くらいの子にもみてほしいし、そのくらいの子を持つ親御さんにもみてほしい
でも一番観て欲しいのはこういうことを実際に隠れて行ってしまっている人かな
こうしていかに滑稽でおぞましい姿を他人にみせつけている、そしてそれをどう見られているのかというのを理解できれば、多少なりとも抵抗して辞めてくれる人も増えるんじゃないかと

あまりに強烈な部分もあるので演じた女性三人はもちろん、関わったスタッフさんたちの心のケアを撮影後にもしっかりされていることを願わずにはいられないドキュメンタリーでしたが

にしても邦題が呆れるほど酷い
こんなの誰も得しないでしょ

2021 劇場鑑賞 No.027
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