B5版

ピノキオのB5版のネタバレレビュー・内容・結末

ピノキオ(2022年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

ただ同じ物語を繰り返すだけでは意味はない。
かといってすでに完成された物語を組み立て直すのは困難である、という実写化の難しさが滲み出た作品ではないだろうか。
ただラストは好き。

初見まず、主人公達のキャラメイクが天下のディズニーのCGにしては割とお粗末で資金不足を心配した。
ジミニーの虫感の強さやフィガロとクレオの擬人化の塩梅は失敗してると思う。
(モンストロがB級サメ映画のそれになってたのは一周回って面白かった)

良い点は、ゼペットおじさんがオリジナル版よりキャラクター描写に厚みが出ているところ。
また、人間から人外への差別シーンが追加されたところなんかは、ファウルフェロー達も昔教育を受けられなかった過去があったのかな…?と今回で思い至った。

ジミニーやファウルフェロー達とゼペットの世界がピノキオを介さないと絶妙に交わらずに、ただの人間には不可視の世界が存在するようでワクワクするオリジナル版も好きだが、
実写映画「ピノキオ」の、獣人や人間やモンスター、木の男の子が暮らすファンタジーな世界観を解釈し直した部分は好印象だった。

音楽はやや不満。
特に「困ったときには口笛を」が歌わんのかーい!とハズキルーペのcmの如く叫んだがそこは作品のトーンのシリアスさを重視したのかもしれない。
キャッチーなフレーズをリフレインするオリジナル版の音楽とミュージカル調の音楽と比較することは野暮だが、全体的に曲が少ないような…

ピノキオという男の子はオリジナルアニメでは甘言に流されやすく、簡単に悪の道に逸れてしまう。
実写ではそこに至る過程に人間側の拒絶があり、誘惑があり、誘拐されたという致し方なしのお膳立てが追加描写されてる。
これはオリジナルの「欲に揺れやすい無垢な存在が良心を獲得するまでの軌跡の話」から、
実写版の「普通や世間からはみ出すマイノリティの葛藤」という題材の変化による違いなのだろうが、良い子のディズニーの基準値に引っかかったのかと邪推するかは人次第。
令和のピノキオは葉巻も酒もやらなきようだ。

そして
「本物か偽物の区別は愛の前には不必要」という今回のテーマ。
オリジナルのラスト、海面に揺蕩う絶命したピノキオのどキツい一枚絵に、子供心に還らない存在というものを感じ涙した私は、贔屓目もあるが全体の完成度はオリジナルには勝てないと思う。
しかし、「本物とはなにか?」という問題のアンサーとしてはこの幕の引き方は現代的であり、ジーンとくるものがあった。

これだけでもう作り直す価値がある実写だったねと満足しました。
B5版

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