このレビューはネタバレを含みます
時は死なず、巡ることなし。
幾粒の雨が迎える始まりと終わり。
メビウスの輪のように延々と形を変える過去、現在、そして今。
一見三つのエピソードが連なる群像劇、しかし一癖のある本作。
愛を巡る話だが、それ以前に慕情が育ち切る前に世界の理不尽により摘まれた芽の話でもある。
土煙る砂漠の大地ても、都会の煌びやかなレストランでも人々は対立し反駁する。
彷徨いの行先にはいつも、争いがあり、大地には血が流れる。
死にゆく前にどんな花が芽吹いていたのか、あとは誰もわからないまま。
終幕、幾多の悲劇の終わりと共にふたたび運命は流転する。
そこに見える微かに異なる歯車の存在に、
円環からの脱出を儚く期待を寄せながら降り注ぐ雨と共にゆっくりと閉じていく世界を観客は見送ることになる。
この物語に終わりはくるのか?
マケドニアの美しい風景に感嘆しながらメビウスの輪の終着点を探しに、何度も何度も観たくなる映画だ。