B5版

アメリカン・ヒストリーXのB5版のレビュー・感想・評価

アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)
3.4
大学生の時以来の再鑑賞。
数年越しに観る物語は古めかしい過去の歴史とはなりえず、依然として現実と濃くリンクする世情の話である。虚しいことに。

物語は主人公の兄デレクが殺人の罪で刑務所に入ってから3年の月日が経ったところから始まる。
弟の心に残る兄は「野蛮で姑息なよそもの達」から街を守るヒーローであった。
しかし、刑期を経て帰ってきた兄の言動は以前とは様子が異なっていて…

過去回想シーンのWエドワードの演技がすごかった。
ノートン演じる兄の、軽々と命を奪う様の壊れぶり、それを漢の生き様を見よと言わんばかりに全能感と歓喜に満ちた笑みの狂気。対する虐殺を目の当たりにした弟の、羨望の眼差しからの転換、放心と絶望に染まる過程、やはり二人ともいい役者。

序盤、心のかけ違いで離れ離れになっていた兄弟は対話により、兄が刑務所で受けた出来事を共有することで人種を超えた友情の存在を信じ、レイシズムへの敵対を静かに決意する。
しかし全てが丸く収まったと観客が安堵したその時、序盤に見え隠れしていた因果の根が芽吹く。
兄デレクが過去の自分との決別を決められるか選択を迫られてるのは、ラストの今日この日からなのだ。
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