群青

ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカットの群青のレビュー・感想・評価

3.8
一度世に公開された作品はDVDなどでディレクターズカットが発売されることはあっても、作品そのものを作り替えることなんてほぼなかった。

しかしこのジャスティス・リーグは再び創られた。なぜこの作品だけセカンドチャンスが与えられたのか。


ジャスティス・リーグ製作中に娘が自死してしまったザック・スナイダー監督。
彼はこの作品を途中で降り、後続の監督を請け負ったのがライバルであるマーベルで、しかもあろうことかアベンジャーズを監督したジョス・ウェドン監督だった。
このニュースはヒーローを体現したニュースだったので感動したものだった。
しかし蓋を開けばDCの迷走ぶりが露呈される結果となってしまった。

その頃、DCはバットマンvsスーパーマンが思った以上の評価を得られず、スーサイド・スクワッドは失敗し、ワンダーウーマンでやっと成功作を収めたところだった。
ジャスティス・リーグはワンダーウーマンだけ単独作ありで、スーパーマン、バットマンを除いて他のヒーロー3人はこの作品でほぼ初登場だった。
新キャラ3人を説明しつつなんてのは大変たし、ザック・スナイダーの作風が時代に合わないのではないか、ということでDC上層部はジャス・ウェドンにマーベル並みに明るく笑いがあるような作りを指示。しかも尺は2時間以内とした。
しかしこれがダメだった。

それまでの作風とは全く違うもので、ザック・スナイダーの作風は逆にDCのシリーズの根幹をなすものだったというのがわかってしまったのだった。

そのため、ファンたちは当然ザック・スナイダーの意図したジャスティス・リーグを観たがった。普通ならこれでも作り直しなんてのにはならないが、署名運動もあり俳優たちも声を上げ、さらには監督本人まで自分用がある、と声明を出すなどすごい事態に。
流石のDCも根負けしたのか、外伝というかシリーズとはまた違うという解釈の上、さらに劇場公開はせずサブスクなどのストリーミングでの公開が決定。
それならば、ということで監督が追加撮影し、本来意図したジャスティス・リーグに劇場公開という形式では絶対的に足せない尺を追加したザック・スナイダーカットがここに誕生した。
4時間の超大作。

元々撮影していた部分と新たに追加したであろうストーリーは果たしてどうだったのか。


みんな、これが見たかったんだろう?ならば隅々まで見せてやる、ということで4時間全編ザック・スナイダーのエネルギーがとことん詰め込んである。やばかった笑
流石に自分も2日に分けて鑑賞した笑
尺もさることながら、カロリーが尋常じゃない。ご飯でいうと二郎系のラーメンに焼肉とお好み焼き、デザートはでかいパフェという感じ。ムリ笑


しかし自分が公開時、微妙に思った部分が全て良くなっている。ということはあれはジャス・ウェドン版だったのか、と拍子抜け笑
というよりザック・スナイダーの方にも入っていたかもしれないが、批判が多かった部分は修正しているのかもしれない。作り直しの利点はそこにある。が、あんな要素ザック・スナイダーが入れているのも疑問なので、やっぱりジョス・ウェドン版だろう笑

ステッペンウルフの居城の近くに住んでた民間人家族がごっそりカット。
ステッペンウルフのデザインはより凶悪に。
キーアイテムのマザーボックスが途中、ありえないくらいの脱力ものの理由で取られてしまうが、そこの取られ方の展開が全く違う。
敵を倒した後のよくわからない綺麗とも思えない植物は生えず。

もうほんと全く違う。

一番違うのはサイボーグというキャラ。
この作品はサイボーグとオリジンでもあったのだ。このキャラの背景はあって然るべきだが公開版はなかった。悪手だろう、と思っていたらサイボーグ役の俳優がジョス・ウェドンの当時のやり方がとてもアレだったらしく問題になっている。ワンダーウーマンのガル・ガドットも同様の声をあげているので、これジョス・ウェドン、別の意味でやばいんじゃあ…


曲も安易に昔のバットマンやスーパーマンのテーマは使わない。むしろこのシリーズのマン・オブ・スティールの曲を使う。偉い!!

演出は監督の好きなスロー演出が多い、というかめっちゃある!笑
4時間中どんだけスローなんだろ笑

しかしこのスローが終盤あるくだりで使われるのでこのやり方は正解だった。
フラッシュが今までのスピードとは違うやり方で速さを追求するあのくだり。
あそこであれができなければ全てが終わるという、ここぞの時にフラッシュが頑張るあそこはちょっとじんわり。
BGMもさることながら、監督がもしあの時に戻れたら、という叶わないはずの願いを叶えてあげているんじゃないかと思うと、ちょっと涙腺を刺激される。

ラスト手前のシーンは、今作を公開するにあたって追加撮影したものであることは間違いないが、エピローグとしては不必要なんじゃないか?と思ったが、まあ今作が今後の劇場公開されるDCEUのシリーズではない、という扱いであれば問題のないある種のオマケだということだろう。


やることをやりきった監督はもうDCに戻るつもりはないんかな?
まあ確かにジャスティス・リーグ後のDCはアクアマンやシャザム、ワンダーウーマン2など繋がりは匂わせてはいるが結局単独作品にしかなってないし、それすらも絶ってジョーカーとか来月公開のザ・バットマンなどシリーズとは無関係の単独作品も作っている。たしかにマーベルとは差別化されているしこんな感じのバランス感覚でいいんじゃないかと思える。

しかし今度またチームが集まるなら今度こそザック・スナイダーにやってほしい…
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