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99.9-刑事専門弁護士‐ THE MOVIEのDcatcHerKのレビュー・感想・評価

4.3
 別に弁護士でも、検事でも、裁判官でもないが、多少法律に関わる仕事をしてきたせいか、「正義とは何か?」と考えることが多かった。
 法が制定されるときには、罰を与えるとか、財産に処分を加えるためだけでなく、人間の寛容さや慈悲深さも入って制定されている。
 しかし、いざ、それを一つ一つに適用していく時は、関わった人たちのそれぞれの無謀な正義感や使命感が優先されてしまうことがあったように思う。
 ずいぶん昔になるが、亡くなった三浦洋一さん主演の「さすらい刑事(でか)旅情編」という番組をテレビ朝日で放映していたが、その中で気になったせりふがあった。主演の三浦洋一さんが、正義感で物事を判断しようとする若手刑事に「正義感は人それぞれ違う」と教え、「だから俺たちの仕事は真実(事実?)を見つけ、真実(事実?)に基づいて罰を与えなくてはならないんだ」といったセリフを話していたように覚えている。真実だったか事実だったかは、記憶が曖昧で、実際は真実と事実は、ずいぶんと違って、真実は主観が入ることであり、事実は誰もが客観的に認められる事だという。
 この映画は、テレビで放映されていたドラマの映画化である。SEASON IIが始まる前にから鑑賞し、松本潤さん演じる深山大翔の姿勢に好感を持ち、香川照之さん演じる佐田篤弘、木村文乃さん演じる尾崎舞子、班目法律事務所スタッフとのやり取りや、岸部一徳さん演じる班目法律事務所所長斑目春彦の深い顔と言葉に魅せられて鑑賞していた。今作には、ドラマで深山大翔と対峙する役を演じてきた笑福亭鶴瓶さん、奥田英二さんやスペシャルドラマとして昨年末に放映された際に出演された西島秀俊さん、蒔田彩珠さんらが出演し、ストーリー、人間模様も面白く、自分としてはとても楽しめた作品だった。
 Wikipediaでは、深山大翔を「鋭い観察力を持ち、周囲が諦めた事件でも、調書のとおりに現場や再現現場で実際に検証し、徹底的に事実を追究する。弁護対象者の有罪無罪よりも、事実が知りたいとしており、人によって様々に異なる「正義」や「真実」と違い、「事実は1つ」という信条を持つ。」と説明されている。
 今作もドラマ同様、そういった法律事務所内のやり取りの面白さ、オーバーアクション、くだらないダジャレなど、通常なら引き気味な演出も、こちらとしては寛容に観られるから不思議。
 そして、岸部一徳さん演じる班目法律事務所所長斑目春彦の味わいあるお顔とお言葉に、いろいろ考えさせられた。
 この映画を観て、大好きな木村拓哉さん主演の「HERO」を思い出した。実は、「HERO」を観るまで、あまり木村拓哉さんのドラマや映画に興味が無かった。しかし、木村拓哉さん演じる主人公久利生公平が、エリート検事とは違う独特の視点や人間観察眼を持ち、自分の目で現場を確認している姿に興味を持ち、大好きなドラマ、映画になった。今作も同様で、松本潤さんの以前のドラマや映画にあまり興味が無かったが、ドラマのテーマから鑑賞するようになり、彼の演技や普段の誠実な人柄を知ることができたのはラッキーだった。
 ヒロインの河野穂乃果役を演じた杉咲花さん。演技がうまいと評判な女優さんではあるが、今までは、どうしても「肩に力が入っているようなオーバー目な演技では?」と思いがちで、あまり出演されていた映画やドラマを観たことが無かった。今回の役は、ドラマ自体がオーバーアクション気味な演技が多いので、逆に自然体のように感じられてとても好感が持てた。
 
 検事や裁判官、警察官、それ以外にも多くの行政に関わる人たちは限られた予算とマンパワーの中で、それぞれの職責を果たしている。
 これだけ世の中が個人が自由と権利を求め、それぞれの責任を回避する時代、その職責を全うする苦労も大変だと思う。
 99.9%はそういった苦労を積み上げたものだと思うが、故に完全とは言えないのだと思う。この映画では検事や裁判官が良く描かれていないが、実際は一人一人が正義感や使命感を持ちながら奮闘しており、真に助けを求めている人のためにそのパワーが使われ、自分のようなものができるだけ行政にお世話にならないようにと考えながら鑑賞した次第である。
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