Maririn

ボーはおそれているのMaririnのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

酷かったです。本当に酷かった。
人生で初めて映画観ながら吐きそうになった。
吐き気を堪えるのが必死な映画。さすがアリ・アスター。
私が吐きそうになったのは、女の子が青いペンキを飲むシーン。虫が体から出てくるような映画とか、ゾンビが人を食べたりするような映画も気持ち悪いけど、そういうのよりも全然リアル(想像しやすいという意味)で気持ち悪かったな。家で見てたら多分遠慮なく吐いたと思う。

さすがA24というような、抽象的な映像。音の繋ぎ方。音の遠近感。そしてさすがアリ・アスターというような、どっぷり気持ち悪い感じ。しっかり待たせる。ゆっくり、でも確実に、それはやってくる感じ。安堵感と不安感が忘れた頃に交互にやってくる。計算されているなあという感じ。

ただ個人的に不満なのは、忘れた頃にやってくること。忘れた頃にやってくるというより、忘れさせられている感じがすること。あのディティールや、この伏線めいた言葉が、忘れたころに出てくる。忘れた頃に出てくるのはいいけれど、こちとら時間の経過で忘れてるのではなくて、それ以上にショッキングな出来事が起きすぎてるから、そっちに引っ張られて、で?毒蜘蛛がどうした?みたいになる。蜘蛛がなんだった?監視カメラがなんだった?チャンネル72?お父さん?エイレン?刺青まみれの男?裸のフルチンおじさん?ってなってくる。そこまで計算してるのか、アリ・アスター。恐るべし。
そして、ディティールが具体的すぎるのに、メインストーリーは信用できない語り手によってめちゃくちゃ抽象的に描かれる。そして、心象もめちゃくちゃ具体的。だから全てを見終わった時に、なんだったんだ?ってなる。なのに、出来事やキャラクターがいちいち重すぎて、胸糞映画5本見たみたいな感情になって映画館を出ることになる。ラストシーンでHELP!!と叫ぶボーのように、私も誰か助けて!(解説求ム!)と思うし、ボーをぼんやり見つめている大勢の人の1人のように、「つまらない。(退屈だ)」という気持ちで席を立つのだ。

途中でものすごく飽きたから、映画館を出るか迷ったけれど、一応最後まで見てみることにした。
その時は、最後まで見て良かったのか良くなかったのか、分からなかった。
というのも、ラストシーンの構図がもう映画館そのものだったから。
大まかなストーリーは、愛能う限り与えたのに!!という母親と、強迫観念にさらされながら生きてるボーの話なんだれど、(きっとボーは母親のせいでこうなってしまったんだとも思う)。
それを何が真実分からないまま3時間見せられた後の私たちもあのスクリーンに確実に写っていたのよ。信用できない二者を目の前に私たちは、完全に蚊帳の外だった。助けて!と言われても、困るし、母親とボーの問題だし、人の人生を見せられてる観客のあの無関心な表情。「で?それがどうした」みたいな雰囲気。ぞろぞろと帰っていく感じ。あれをやりたかっために作ったわけではないんだろうけど、やられた〜という気持ちになった。

考察はたくさん出ているので、それも含め個人的に興味深いと思ったこと。
1. 水のモチーフ(羊水=セーフティーゾーン)
cf)ノアの方舟
映画の最初では再生、誕生の意味を持つ水(羊水)が徐々にボーの中で「嫌なもの」(お風呂など)へと変化し、ボーを飲み込み、最終的にあのラストの真っ黒い水へと変化する。この話は水がかなり効果的に使われているので、水がどのように変化するかを追うことで、ボーが母親に対してどのような感情を持っているのかが掴めるかもしれない。
2.監視
ボーはずっと監視されている。それはカウンセラーを通して、カメラを通して。奴隷の象徴の足枷までつけられて。ボーは間違いなく被害者である。しかしありのままを移すカメラを通してでさえ、ボーの本音をありのまま聞いてさえ、その真実を歪めるような認知を母親は持っている。被害者はボーであり、加害者が母親なはずなのに、母親がものすごく被害者ぶるのだ。監視という絶対的な圧力。あの未来まで見えちゃう映像が境目を曖昧にしていてすごかったな。
3.ボーは何を恐れていたのか
ボーが恐れていたものは、母親ということでよいのだろうか?外にいるホームレス。裸の殺人鬼。ボーの恐れに共通するものはなんだったのか。

とにかくアリ・アスターがお金と時間をかけて惜しみなく力を発揮しました!みたいな映画だったので、体力があったり、そういう気分の時に見た方がいいかもしれない。私はもう二度と見たくないし、観てる途中も退屈だ〜って思うのに、いろんなシーンが印象的でこれでもかと脳に焼きつくから、もう一度観れば何か分かるかもみたいな気持ちになってくる。それがアリ・アスターの魅力なのかもしれない
あと、ホアキンが素晴らしい。あのゆっくりで繊細な表情変化。最高すぎる。
Maririn

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