たそしだ

ボーはおそれているのたそしだのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

"「何も決めなかった」という罰"

・中盤から何故か画面酔いしてしまって長さも相まってしんどかった。

・中盤までは「ぎりぎりあり得るかも」な不幸の連続。ボー虐。アリアスター監督があの笑顔で嬉々として撮ってる姿が目に見える。
しんどいことが連続すると「いっそのこともっと悪くなれ」と投げやりになることあるけど、ここまで起きたらもはや笑える。でもボーはひたすら耐える。それが更なる不幸を呼び込む。

・ホラーが「起こってほしくないことが起こること」なら本作はまさにホラー。考えうる最悪が連続する。
「起きてほしくない」と考えるほどそれを引き寄せる、みたいな話があるけどタイトルの「ボーはおそれている」はそういうことなのかもしれない。

・普通は描かないほどの丹念な「最悪」を描かせたらやはりアリアスター監督の右に出る者はいないのでは。
ラストの転覆した船のシーンも普通なら場面転換するが、延々と死ぬまでのグロテスクな足掻きがBGMもなしに映される。最悪エンドロールで笑ってしまった。

・森まではボーに共感できて割と良かったけど、演劇シーンからかなり冗長な印象に。本作のメッセージを考えると必要なシーンだろうが、ここはエンタメ性<監督のエゴに感じてしまった。ボー虐+母との対面だけならもう少し好きだったかも。

・ボーの罪は「臆病ゆえに何も選ばなかったこと。自分で決めなかったこと」。
シーンの端々から、彼が徹底的に選択と決定を避け、他人に委ねてきたことが伝わる。
彼は年齢的にはおじさんだが、自立していない少年のままだ。だから、彼が出会う人々は彼をまるで子どものように扱うし、彼自身の言動も幼い(ホアキンのこの演技はすごかった)。
だが、そうなったのは母のせいだとわかる。自由意思を出そうとするボーを否定し、自分の思い通りに動かしてきた。でもほんとこういう親いるよね。
親側を完全なモンスターにせず、共感できるように描いているのはフェアで良かった。

・結末、母が死を偽装して自分のところに向かわせたことが判明する。ボーは数々の受難にも関わらず、母への愛を貫いたことを否定する彼女にキレ、首を絞める。だが、我に返ってその手を離し、船で逃走。逃げた先は審判の場で、むごい死という罰が下される。

・ユダヤ系の受難? 母=神を表している? 

・後半になるほどかなりぶっ飛んでいて「は?」みたいなシーンも少なくないが、壮大な最悪オデッセイがしんどい親子の確執(そしてそのつけを払わされる子ども)というテーマに収束するのは好きだった。
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