チャトウィンを知ったのは大学時代、文化人類学の授業で取り上げられた一冊の本「ソングライン」を通して。その本は、簡単に紹介すると、オーストラリアの先住民アボリジニーに伝わる「ソングライン」という、歌う地図(概念)を辿る旅の中で、チャトウィンが見聞きしたエピソードを綴った旅行記、と言うことになる。(自分にとっては心を大きく揺さぶられた書籍の一つ。世界の捉え方がガラッと変わったし、その後の人生にかなり影響した一冊。)
紀行作家と言われてるみたいだけど、ジャンル分けできない辺境の人であると思う。様々な土地でその文化と精神性に共振できる人。深く'地'と繋がれる想像力と考察力をもって世界を歩いた稀有な人だと思う。
映画は巨匠ヘルツォークが、懐かしい眼差しで、チャトウィンと親交のあった人達の言葉と共に彼の放浪の軌跡を追うドキュメンタリー。ヘルツォークはチャトウィン作品を映画化もしていてその映像や逸話も語られる。ヘルツォークとチャトウィン。時々で交差した二人の時間、互いに影響し合った形跡からヘルツォークの人となりも見えてきてそれもまた興味深いもののひとつでした。
ダイジェスト感あるのでこれを鑑賞してチャトウィンの思想に深く触れることはできないけど、彼を知らない方を引き込む魅力は充分にある。
今月で閉館の岩波ホールでの鑑賞。通っていたと言うほどでもないけど、数々の素晴らしい映画体験をさせて頂いた場所です。来館される方々が他の映画館に比べて年齢層高めな印象で、鑑賞中の笑い声、観賞後の拍手など、とても穏やかで暖かくて、独特の雰囲気の映画館でした。振り返ると懐かしい思い出もあり、映画好きの自分にとって、これからその思い出が更に貴重なものになって行くんだろうと思います。
ありがとうございました。とお礼申し上げます。