かつきよ

あなたの番です 劇場版のかつきよのレビュー・感想・評価

あなたの番です 劇場版(2021年製作の映画)
3.5
まあまあ
ドラマ版あなたの番ですのIF世界線を描いた映画作品。
ただでさえ交換殺人が起こらなかったら、というIF世界線なのに、さらにその3年後の時間軸で始まる。
ドラマ版での事件の火種や問題が一部棚上げになったり、違った形で残ったり解決したりしているので、その辺りの設定は新旬ドラマを見ていないと詳しくは説明されない。前提知識として、新春ドラマ視聴は割と必須。

加えて、膨大な登場人物の背景設定は全く触れられなかったり、ダイジェスト気味で触れられるだけだったり、そうでなくてもドラマ版を受けての変化球、ドラマ版での知識を逆手に取っての演出が多いので、膨大な連続ドラマ版も視聴が必須で、新規参入はあまり狙ってない感じ。

それでいて内容は、ほぼファンディスクのようなもので、ドラマ版IF設定を逆手にBADEND全部逆回収してハピエンにした夢世界って感じです。

もちろん、死者は出るのだから、報われないキャラクターは映画版でも出るんだけど……
トリックも犯人も全部面白さよりも消去法で選んでいる感じがして、機械的な脚本。深く強くより、浅く広く、ヘイトを集めないように選んだ選抜犯人、選抜被害者って感じ。そこそこ冒険して、そこそこ意外性狙って、最低限の損失で売上狙ってるつまんないマーケティングの映画だなって印象が強い。こう言う作品って、つまらなさすぎるわけじゃないんだけど、人生を根底から覆すような感動とか衝撃とか豊かさを与えてはくれないから、見る価値をあまり感じないです。

キャラが多いから当たり前だけど、出ないキャラがいるのはもちろん、出演キャラクターでも活躍に結構差がある。それはもちろんしょうがないけど。そんなしょうもないことが気になる程度の映画。

ドラマ版で悲しい思いした人たちが報われるのはよかったね、って感じだったけど、見てよかったかと思うと、やっぱり面白かった部分とつまんねーなって思った部分が半々。

独特のギャグセンスに関しては、見る人によっては寒気を催しそうな下らなさなんだけど、なぜか個人的には悔しいながらも笑えるところもあって、特に早苗さんのキチガイっぷりなんかがツボだから見られてよかったです。

前半から中盤にかけての盛り上がりとか、カメラワーク、演出とかは結構ワクワクさせられる感じで、見てて楽しかったけど、オチにかけて瓦解していく感じ。
このつまらなさ、誰が戦犯なのかはわからないけど、ドラマ版と同じガッカリ感。オチにかけてのぐだぐだ、ワクワクやフラグ乱立に対して不相応なちっさいオチ、急激なつまらなさ、シラケが目立った作品だなと思いました。本当に盛り上げ上手なのに、オチに迫力もないし説得力もないし無理やりだしどうでもいいし鑑賞後感に爽快感も納得感もなんにもないんですよね。

ただ、完全に駄作というわけではなくて、ドラマ版で悔しい思いや悲しい思いをした視聴者の中には、IFでもこういう世界を望んでいた人がいるはず。こう言う強度の作品を求めてる人もいるはず。
あな番のキャラが好きで、大ファンだったら、見る価値はあるかなぁ
そうじゃなければどっちでもいい感じ。




※以下、ネタバレ感想





















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ネタバレ有り

雑感





黒島ちゃんが赤池の孫だって最終回で明かされる設定が最初から割れてる。それを逆手にとって、美里が何か企んでいたのは赤池幸子に向けられた殺意だと思ったのに、遺産の取り分のために黒島ちゃんに向けられた殺意だったって言うのがまずほほうと思った点


床島さんはなぜ死んだのか
ドラマ版をなぞるような最初の犠牲者なのはいいし、ドラマ版がそのまま考察の鍵になってて、また自殺なのかなーとか考えろってことなのかもしれないけど、それにしても最後まで真相のヒントがないのは単純にモヤモヤ。一応黒島ちゃんが携帯持って美里のこと脅してたから、黒島が犯人?とも思うけど、管理人だけ殺す理由は?美里は生かす理由は?どーやんと愛し合ってて、もう前の私じゃないってなってる直前に人殺してるのも違和感だし……。結局方法とか、なぜ携帯持ってたのかも謎のまま。変な部分空白にされて、考察するの好きでしょ?って視聴者に投げてるつもりかもしれないけど、視聴者は考察しないがある謎が好きなわけで、ノーヒントで考えるだけ徒労で、結果がわかっても特に新しい発見もない謎は嫌いなんだぞ


早苗さんのバタフライ面白すぎる
早苗さんのバタフライ見るだけで価値があった
聡一郎くんは海外でもばりばりに人を殺してると思いますよ。
なぜ聡一郎くんを活躍させなかったのかがよくわからん。映画版でこそ花開いて欲しかった


おのみきは……活躍して欲しかった
子供が細川朝男との子供なんじゃないかって言うのは安直すぎて別にびっくりしなかったし、おのみきはは奪った後の男に興味無くしそうなのに普通に結婚するのも想像できないから違和感
細川も幹葉もハッピーエンドの奴隷にされた感がする。
チャクラにキスさせるシーンだけ好き

○南さんの死と犯人
みなみさん関連はドラマ版見てなかったら、誰?だしポカンな出演のされ方。
無理に出さなくてよかったと思う。

殺人が一つ(メインの黒島ちゃんの死)だけだとインパクトに欠けるからもう一人誰か殺したいってなって、じゃあ誰が死ぬってなった時既存キャラの中で一番死んでも良さそうなキャラ選んだ結果って感じがする。犯人も、人気キャラクタにさせるわけにはいかないから新キャラにしたと。
一応全部新設定じゃなくて、ドラマ版からの設定を絡ませなきゃいけないから、二人とも黒島ちゃんを殺そうとして間違えて殺しちゃったと
つまらん

○真犯人
お前か
どうでもいい真犯人
こいつが真犯人で、やられた!!おもしろかった!騙された!映画版すげー!!!!って思った人絶対にいないだろって思う
これだけ盛り上げといて動機も恋愛的な執着とか嫉妬とかそういうありきたりなやつ
深さを無理やり与えようとしてるけど、明らかに手に持て余してる。完全にエンタメ的な浅い演出と心理描写で辟易とする

○黒島
一番許せないのは黒島ちゃん
ドラマ版でも、中2のガキが描いたかのようなお手本のように貼り付けたような浅いサイコパス描写で、折角のキャラの魅力とギャップが活かしきれず、描き切れてもおらず、とってもとっても残念だったけど、映画版でまさかこれ以上汚されることになるとは……
あんだけどうしょうもないサイコパスが、人のこと好きになっちゃった〜みたいな
でも、0.1%でも私の中に眠る狂気が恐ろしいからあたしは死にます

ってなんだそれ

脚本書いたやつ誰だ出てこい。
プロットはまだいいのかもしれないけど、演出がダメなのかな、無理な好感度上げにも見えるし、
彼女の人生とか価値観とか、歪みとか、苦しみとか、それを受け入れるまでの過程とか、受け入れるしかなかったどうしようもない狂気とか…………そういったもの、全否定な脚本では?恋してまともになれました(なりたい)って、そんな簡単に片づけられていいパーソナリティじゃないと思うんだけどなぁ。簡単に片付けてるつもりではないのかもしれないけど、愛の力に説得力を持たせる演出されてないから。ハピエンの餌食にされたと感じてしまう
サイコパス総一郎は海外左遷で隔離。黒島ちゃんは愛をみつけたけど変われそうにないから自殺まがいの他殺……彼女の過去の被害者も事故死。戦犯は消えてキウンクエは円満終了
よかったよかった
んなわけあるかーい!!!!!!!!!!!!!!笑笑

○黒島とどーやん
どーやんのプロポーズ台詞と、黒島ちゃんへの刑事への返答を交互に映像にのせるミスリーディングは映像作品ならでは
完全に騙されたし、カチッとハマる台本で個人的には好き
賛否両論ありそうだけどね

○ラストの犯人究明フェーズ
がとにかくお粗末
探偵ものの解明パートといえば山場も山場、大盛り上がり
閉鎖された客船の甲板に人を集めて犯人を突きつける!というのは探偵もので最も山場の山場
今回その役をななちゃんが勤めるのは大変によかったけれど、まさかの犯人全く分かってないのはどうなの……推理も何もない

ご都合で作られたご都合設定のご都合液を、黒島ちゃんが護身用として使ってるか使っていないかもわからない(使っていなかったらアウト)
犯人にかけてたとして、気づかれていたら服は捨てられてるかもしれない(捨てられてたらアウト)
気づいていないに関わらずそもそも普通に着替えてるかもしれない(というか普通に連続で同じ服着ていないだろうから着替えてる可能性が高くてそしたらアウト)だけど、黒島ちゃんはそのご都合液体を犯人に噴射してるし犯人は服も着替え得ていないと信じて海水をぶちかけまくる
どういうこと??????????????

そもそも黒島ちゃんはほぼ自殺だし、抵抗する意志はなかったんだよね?
護身用として、念のため手につけていた液体が(しかも乾いていたと思うのにあんなにはっきりと服に手形がつくものなのか?)偶然ついただけじゃん
偶然他の人触られてたらその人犯人にされてたの?それとも黒島ちゃんは刑事が犯人だってヒントを残したくて手に塗ってわざと触ったの?行動が意味がわからないし、嘱託殺人って時点で色々変わってくるんだけど

刑事も刑事で翔太くんのこと最後雑に殺そうとしてるしさぁ
あれ成功してて上手くいくわけないじゃん……なぜ……なぜなのすぎる
脚本突然思考放棄した?盛り上がるためのシーンであのお粗末さはあまりにもすぎて死

○どーやんこと横浜流星の
キックシーンかっこいい!アクション映画かと思った

○坪倉さんがゴルフバッグ開けるシーン好き
今回の男三人衆はただ仲良いおっさんだったな

○最後
黒島ちゃんの役をどーやんがやって、ななちゃんの寝起きドッキリをするシーン、どうせ生きてるってわかっててもひやっとした
鍵もかけてないの本当にあり得ないから!!
寝てる間に蝿が止まる演出も、寝起きのななちゃんも不自然すぎて
完全に生きてる軸パロディのためだけのシーン
みんなが求めてたのこれやろ???????????感が笑

良くも悪くも、はいはいって思ってた人と、これが公式で供給されてよかったって思う人と、どっちもいると思うけど
個人的には否定もしないけど肯定もしないかなって感じ。
物語だとしても、人の死ってそんな簡単にパラレルとかで覆していいものだと思ってなくて、それをウリにしてる作品ならまだしも、パラレルで生きてる世界線も描かれてしまうと、、、元作品での悲しみとかやるせなさとか、取り戻すことの出来ない価値やバランスが奪われてしまう感覚があって
所詮はフィクションなんだし、そういう世界線を公式で描いてくれて、幸せになってるキャラクタを見られるのが嬉しい反面、だからこそ描けた物語の完全性を損なってしまうような
なんていえばいいんだろうなー
これはあな番には限らないけど


とにかくまあまあ
見てよかったかな
赤池美里ってどうやって黒島殺そうとしてたんだろ
かつきよ

かつきよ