かつきよ

シャイニングのかつきよのレビュー・感想・評価

シャイニング(1980年製作の映画)
3.8
ずっと見たい見たいと思ってた作品、遂に鑑賞。
これがあのシャイニング!!!!
レディプレーヤーワンをはじめ、映画鑑賞を趣味にしていると必ずぶち当たるシャイニングパロ。シャイニングを見たことがないのに映画が趣味なんて言えないだろ!(そんなことはない)とモヤモヤしてたので、やっと見られて感無量でした。

実は、最初は画面も少し古臭いし、テンポも独特な感じなのでうまく入り込めず、ずっと積んでしまったんですよね。
しかし、見てるうちにだんだん映画の中に吸い込まれていくような変な感覚になり、あっという間に終わってしまいました。

◆伝奇映画

ホラージャンルだけど、なんというか、実際には伝奇映画だなと思いました。
ジャンル的には心霊ホラーのはずなんですが、心霊ホラーというより、不気味×狂気×倒錯……と連想します。

◆意図不明の数々のシーン

ストーリーラインは一応存在してるけど、突然いろんなイベントが発生し、その説明が無いままにどんどん物語が進んでいく映画
何が起こってるんだ、と把握しようとするとどんどん訳がわからなくなるし、映像表現一つ一つにメッセージ性や意味は感じるけど、具体的にどういうメッセージや意味なのかは謎

イベントに対する登場人物の反応も予想と噛み合わないこともしばしば
なんで黙ってるの?さっきあったのスルー?それどういう感情????と、そんなシーンもしばしばしばしば

ただ、訳がわからないながらも確実に狂気に飲み込まれていく主人公
とにかくゾクゾクします

日毎に進む物語では、途中の日付が抜けてたりするのも意味深だけど、なぜそんなことするのかわからない……
キューブリック監督って鬼才なんだなって、シャイニング見ただけで分かります。こんなにチグハグなのに、そのちぐはぐさが芸術的で、どんどん迷路にハマっていくような面白さがあったと思います

◆原作とは別物

キングは激怒したらしいですが、こんな素晴らしい映画なのにどうして?と思っていました
しかし、じゃあ自分が原作者だったら?と思ったら想像できないこともない

というのも、映画シャイニングは完全にキューブリック監督が私物化してるなと感じたからです
完全に自分の作品にしちゃってませんか?笑

原作があるとはいえ、この映画はこれだけで個別に完成してしまっていて、他の何物も繋がれない唯一性・隔絶めいたものを感じました。

この後ドクタースリープも見たのですが、シャイニングのシーンや表現について、散々議論されていた論点に対するある種のシンプルな種明かし的な設定が多数登場しておりました。
そのことからも、キング版の原作のシャイニングは確かに一つの解釈の正解がある気がします。

しかし、表面的に似ていて、共通の要素があっても、キューブリック監督のシャイニングは中身は全然別解釈で構成されているように感じました。原作にはない表現の数々の意図は、原作者を超えてもはやキューブリック監督しか知らない彼だけの狂気、そんなクリエイティビティを感じました

自分の作品がそんな風に別の何かにされたら、まぁ、怒る……かなぁ。

◆映画好きなら見てほしい

エンタメ的な面白さはないけど(ある意味ではこれがエンタメの頂点とも言えるのか)、不思議でどんどん迷子になっていくような世界観には確実に引き込まれます
完全な芸術映画なのかと言われるとそれもまた違っていて、狂気に飲み込まれるホラーとしてゾクゾクしながら見ることももちろんできますので、気になる方はぜひ見てみてください!!

◆印象に残ったところ

有名な「おコンバンハ」のシーンは、やっぱり衝撃でしたね
来るか!?来るか!?って思ってから思ったより引っ張られたなというのが印象です
ジャックニコルソンの怪演、思ったよりも激しくて、もうぞわぞわしました。本当に頭いかれてるんじゃないかと
ウェンディー役のシェリーさんの恐怖の演技好きすぎて、斧に怯える顔、半端ない
本当に憔悴しきってるんじゃないかと
実際役者が病院に行かなきゃいけなくなるほど狂気的に作られた映画で、同じシーンで100カット以上ザラだったらしいので、みんな本当に狂ってたし憔悴してたんだろうと思います。演技じゃなくて、リアルな極限が画面に映ってるからこそ、こんなにも怖いのでしょう。

あとは唐突に挿入されるホモのシーン
あれが不気味すぎて、意味わからないし脳裏に焼き付いて離れません
あの着ぐるみの方、できればもう2度とみたくないほどゾワっとしますね
人を怖がらせるってこういうことだなって思っちゃいます。人にトラウマを植え付けようと思った時、あれをあのタイミングで挿入しようと思うキューブリック監督いかれてますよね(絶賛)

◆おわりに

シャイニングに関してはもう、いうことほとんどないですね。有名ですし、考察や解説もされつくしているので……
最後に、そんな解説サイトのご紹介

【参考】

⚫︎
https://filmaga.filmarks.com/articles/2270/

なんだかんだ面白いFilmarksのフィルマガ。
筆者の解釈も入ってるけど、撮影秘話や舞台裏がわかる
特にキューブリック監督がどういう人なのかという点に重きが置かれていますね

⚫︎
https://eigahitottobi.com/article/71544/#119143

内容は被っているけど、プラスαで逸話がわかります

⚫︎
https://m.youtube.com/watch?v=FmWbVVePAkI

大好きな、すぐわかるおさんの考察動画
彼は映画監督の発言や続編、原作などを排除して完全に映画単体に向き合った解釈をする考察が多いのですが、今作が原作を離れた完全なオリジナル作品寄りの撮られ方なので、かなり鋭く映画と向き合われているなと思っています
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