ロックウェルアイズ

うみべの女の子のロックウェルアイズのネタバレレビュー・内容・結末

うみべの女の子(2021年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

海辺の街に暮らす小梅は、好意を寄せる三崎先輩に振られ、同級生の磯部と体の関係を持つ。
その後何度も体を重ねるようになった2人。
時に避け合い時に惹かれ合って、好きという感情に翻弄されながら、2人は少しずつ大人へと近づいていく。

浅野いにおの同名マンガが原作。
中学生という大人への転換期に直面する性の問題。
何にも染まれない不安定な年頃を非常に上手く描いていた。
「好き」の気持ちが分からない。その反動で体を重ねるというのは中学生の性事情ではなく、分からないという不安からの妄想とさえ思う。
それが恋だよ、小梅ちゃん。

この映画はキャストについて触れずには語れない。
石川瑠華、青木柚、前田旺志郎、中田青渚、倉悠貴…etc
2021年を代表するような注目若手俳優大集結。
サマーフィルムと並んで今年期待していた作品だが、それはこのキャストだったからというのが大きい。
実際、実年齢は離れているにも関わらず本当に中学生に見えてしまう。
特に凄かったのが主演のおふたり。
小学生でも通用しそうな石川瑠華さん。
メイクや髪型もあるが、中学生時代と高校生時代をしっかり演じ分けていた。
一方、青木柚さんは、中二病的な幼稚さとふとした時の大人びてどこか達観したような表情の二面性が美しい。

内容が内容であるし、安っぽくも見えてしまう撮り方なので、かなり好みは分かれると思う。
ただ、私は好きだ。
純粋だけど汚くて、丁寧だけどがさつ。
海の匂いと精子の匂いの鬱空間に胸が締め付けられる。
重いテーマではあるものの、桂子の救いのようなノリや小梅の何気ないボケなど、所々フッと気が抜けて少し心地良い。
「佐藤はいつかそれなりの男を好きになって、まるで初めてみたいなセックスするんだ」
この話はきっと“はっぴいえんど”だ。そう信じよう。

↓以下ガッツリネタバレします。

好きなシーン BEST5

①嵐の中の文化祭
小梅が校内放送にリクエストした「風をあつめて」が流れ、小梅が磯部を探す。
「風をあつめて」のゆったりしたメロディと荒々しい台風のギャップが堪らない。
間違いなくこの映画のクライマックスであり、「風をあつめて」のイメージがガラリと変わる瞬間。

②浜辺でメモリーカードを探すラストシーン
小梅が何かを見つけた瞬間の映像表現が美しい。
海が青みを得て視界が開ける解放の時。
故郷であるはずなのに、小梅が「海だー!」と叫ぶ姿になんだか少し安心した。

③磯部に小梅がキスを求めた別れの港
うみべの女の子を見つけ、台風一過のように変わってしまった磯部。
キスの重みが伝わってくる。
そういえば、劇中で情事の際も2人にキスは無かった。
キスをせず、別れた2人。小梅には悪いけどそれで良いんだと内心ガッツポーズ。

④磯部と鹿島の衝突
磯部の挑発スキルの高いこと。
鹿島はあそこまでやられて耐えた方よ。あれで殴らない奴はいない。
その後再会した時には自分に否を認め、桂子とも一緒になった。
よくよく考えたら鹿島ってめちゃくちゃくちゃくちゃ良い奴やん‼︎‼︎

⑤磯部が黒い正義を振りかざすあの行動
国道沿いのビリヤード店。三崎先輩をボッコボコにした例の事件。
やり方は絶対間違っているけど、一連の復讐と制裁がカッコ良すぎて…
終盤、警察に事情を聞かれ、夕焼け空を見上げながら間を置いての「はい」はなんとも男前!