ロックウェルアイズ

エクス・マキナのロックウェルアイズのネタバレレビュー・内容・結末

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

世界最大のインターネット会社「ブルーブック」で働くプログラマーのケイレブは社内抽選に当たり、滅多に人に会わないというCEOのネイサンの別荘に滞在することになる。
そこには美しい女性型ロボットの“エヴァ”がいた。
ケイレブは彼女の人工知能のテストに協力することになるのだが……

2月になったので新テーマ。
〈A24のぶっ飛んだ映画〉

アレックス・ガーランド監督作は2本目。
『MEN 同じ顔の男たち』も好きだったけど、本作もどこか不穏で暗示的な面白い映画だった。
昨今話題のAIを主題としたSFスリラー。
タイトルのエクス・マキナ(デウス・エクス・マキナ)とは、古代ギリシアの演劇で絶対的な“神”が突如現れて半ば強引に物語を丸く収める演出方法の一つ。
かなり頭の良い映画といった印象だが、ただ頭の良い映画ではない。
AIを人間と見るのかコンピューターと見るのか。
造形に人間らしさを残しつつも、エヴァをコンピューターとして扱うネイサンは研究者、開発者としては何も間違ってないと思う。
それどころか、悪の雰囲気さえ纏ったネイサンの方が正解だった気がする。
ある意味ケイレブの自業自得。
確かに理論的にはコミュニケーション取る上で人間的な見た目や性別は必要かもしれないが、AIを管理する上では絶対箱の方が良い。
女性、しかも裸で作っちゃうところがネイサンのキモさ出てたな。

クライマックスの“アレ”は、どんな映画でも体験したことのない全く新感覚の恐怖だった。
もちろんアリシア・ヴィキャンデルとソノヤ・ミズノの演技であり、彼女たちの素晴らしさを実感すると同時に、あそこだけは本能的に人間とは違う力が働いているように思えた。
もはや演技の域を超えた人ではない知能を感じる。
スッと入るナイフ、そしてヌルッと身を交わす。
まさに“神”が降りてきた瞬間なのではないか?

前作でも感じていたが、この監督は緑がとても美しい。
様々な緑、そして奥深いのだ。
この緑が映画に独特の神話的な雰囲気を与えている。
画面に登場する人や物以外に何かがこちらを見つめているような感覚。
自然の中に神を感じるのは日本人的な感覚によるものなのだろうか?

これはただAIの恐ろしさを描いただけではないように思える。
人工知能という存在を前にして、一体我々の存在とは何なのか?恋愛感情とはどういったものであるか?色々と考えさせられた。
AIの物語の様相だが、紛れもない我々の物語である。