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隔たる世界の2人のOtoのレビュー・感想・評価

隔たる世界の2人(2020年製作の映画)
4.0
名作CMの延長にあるような、社会への強い怒りを持つ作品。非常にシンプルだけどオチが圧巻。お伽話で終わらない信念。

天使のように大胆に、悪魔のように細心に。素人のように発想し、玄人のように実行する。
「不当に殺される黒人がその最悪な一日をループしてしまう物語」。この企画自体は社会への視点を持つ作家なら辿り着ける気がするけど、それを実現させる悪魔的周到さに唸った。

コアアイデアは最後の「どれだけ時間がかかっても、何度繰り返しても、俺は絶対に犬が待つ家に帰るんだ」だと思うんだけど、
お金、タバコ、部屋番号…ループに実際にハマったらどう行動するかが考え抜かれているし、打開策にもすごく納得がいく。
ショットの選び方も的確で、起床と倒れ込むカットは特に迫力を感じた。

なんといってもメタなオチとエンドロール。実世界に存在する未解決問題であることを伝えて、それでも諦めないという当事者の視点で語る、という映像の強さを最大限に活かしているのが素晴らしい。白人と黒人のペアでW監督してるのも完璧だ。

『パームスプリングス』と連続で観たので、タイムループってまだまだ可能性があるんだなーって思った。抜け出すことがミッションになるか、望んで繰り返しやり直すか、いずれにしろ、他のジャンルとの合体がしやすい。ヤクザにしてもモンスターにしても、ジャンル自体が古くなることってない。
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