小川プロの裏側が観れるのが貴重だけでなくスタッフそれぞれの立ち位置や語りがシンプルに面白い。
エンドクレジットがあいうえお順なことが小川の誠意の表れであろう。田村さんのカメラ愛と録音湯本さんの照れ隠しな話し方、色々見応えあった…インタビューによって作り手の考えが変化し飲み会やコミュニケーションで作り上げる小川プロの映画生活を覗き見できるという点で必見。「草とり草子」という傑作を撮った小川プロ助監督福田克彦の映像学という点でも見逃せない。

• #mingo2022

映画作家・小川紳介の到達点とされる『三里塚 辺田部落』の撮影終了～編集中の小川プロを捉えたドキュメンタリー。ラッシュ試写のあとのスタッフ間の話し合いの中で本人の口から語られる小川の演出/映像論や、そこに垣間見える共同体としての小川プロのありよう(佐藤真はそれを“小川的家父長制”と表現する)はやはり面白い。「田村君はラッシュを見るとどうしても外側が気になるって言ってたじゃない。でもフレームの中にもあるわけだ。フレームになりきらないものが。」映像の恣意性に自省的な田村正毅の発言も、想像以上に奥深い個々人の生を映像に表出させることにこだわる小川の姿勢も、たいへん示唆に富んでいる。ラッシュの映像を観ながらカメラの動きに合わせて無意識に首を動かしてしまうという田村の談は可笑しかった。それと同時に、牧野村に向かった小川たちと決別して三里塚で個人的ドキュメンタリー『草とり草紙』を撮ることになる福田克彦の習作としても興味深い。映画の後半で現地の小川たちから東京の事務所で上映活動・金策にあたる末端のスタッフたちへと撮影対象を移し、上映交渉のため出向いた東北から帰京したスタッフの語りに真摯に耳を傾ける温和な視点は小川には確実に欠けているものだろう。録音の湯本希生と撮影の田村正毅が自慢のカスタム機材を紹介するシーンも不思議な幸福感があって印象深い。

2023-12-5