踊る猫

ボヘミアン・ラプソディ ライブ・エイド完全版の踊る猫のレビュー・感想・評価

4.2
ウェルメイドな映画だと思う。不躾な言い方になるが、テンポがいいので退屈はしない。だが、裏返せば深みが足りないとも言える。全てがフェイクに感じられる、というか……もちろん本物のフレディ・マーキュリーを召喚するわけにもいかないので相当健闘していることはわかる。だから俳優陣に罪(?)はない。問題はストーリーの進め方だろう。この映画ではフレディがインドの移民の家族出身でありゲイでもあるというマイノリティ性を背負っていること、そしてゲイの文化であるディスコに共感を抱いたこと、変態と呼ばれても己を貫いたこと……といった部分がくどく描かれない。「こんなこともありました」とあっさり描かれているので、「え、なぜ?」と疑問を抱くこちらをはぐらかすようにストーリーが進んでしまうのだ。ライブ・エイドについても当時どういう社会現象や政治が絡んで行われたことなのか掘り下げられるだろう。裏返せば掘り下げずにクイーンを徹底的に完璧に近くなるまで再現させたという意味で確かに愛情と情熱は頭が下がるものではあるのだけれど……箱庭の中で組み立てたクイーン、という印象を抱いた。
踊る猫

踊る猫