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アメリカ THE MOVIEのAirconのレビュー・感想・評価

アメリカ THE MOVIE(2021年製作の映画)
3.4
独立記念日に合わせてか、アメリカの建国の話。
Netflixっぽい、リベラルな体でヘイトの方向を操作してうまいことやってる感。

イギリスが悪でアメリカが正義という建国時の構図、、、中国人、インディアン、黒人はアメリカを支える仲間という多様性に配慮した構図がそれぞれ、前者は白人ポピュリズムとナショナリズム、後者はリベラルのプロパガンダという一挙両得な形。
無茶しすぎ。
ワシントンの仲間にジェロニモ(インディアン)がいるのはさすがに引く。
しれっと通してるけど。


イギリスかぶれの裏切り者ベネディクトアーノルド、ジェームズ王(1世?2世?)を悪役に、建国の立役者ジョージワシントン、サミュエルアダムズ、ポールリヴィアを中心に、スーパーヒーロー科学者枠でトーマスエジソン(女で中国人)、酋長ジェロニモが仲間。
建国時の1+3人にいろいろ加えた形。
リンカーンもワシントンの親友。


イギリスにヘイトを集める形で結束しているものの、ワシントンなんてインディアンを殺しまくってたし、後の世のジェロニモなんて家族も仲間も全員殺されて、必死に抵抗した後は人間牧場に入れられて見世物にされて、当時の大統領も見に来てるからな。

中国人も、まともなツッコミ役として、頭のいい万能な味方として、「建国時の仲間に入れてあげましょう」というIFに対しても、アメリカの傲慢さと中国との利害関係しか感じられない。
多様性と言いつつも、「悟空は俺だけどクリリンはお前らにしてやる」程度。
白人の自虐的なアホさも、結局は主人公の余裕として処理されれば自虐にもならないし、中国人の頭の良さも白人にとっての利益として処理され、”白人とお前ら”の構図は譲ることはない。
みんなが星条旗のユニフォームを着て対等に見えても決して越えることのできない壁がある。
それでも、エジソンを中国人にすることと、それを建国時の重要な登場人物にする、”改変”をすることで、アメリカ国内の中国人に対するポリコレ的文脈での配慮になると同時に、中国に対する姿勢の表れにはなる。

つまり、多様性としてはまだまだ傲慢なラインで、建国時に消そうとしてた人種まで仲間だと言って見せたところで、実際に建国に携わったことになるわけでもないし、そんな中途半端な多様性なら認めないで、本来のコストを支払うべき。
”仲間として認めているという体にした”という既成事実が”白人にとって”都合が良いだけ。

結果として出力されるのは、
白人は脅かされない程度の多様性で、配慮の姿勢を見せつつも”白人とお前ら”の関係は変わらない、
コスト(罪)だけは同化することで無くなり、
新しい利益(移民や外国)との繋がりを育てる、
という3点。
(余裕の表れであっても)自虐的に描くことで、アメリカは表現の自由が進んでる的な評価もあるし。。。
本当に巧い。
譲歩は少しなのに利益はたくさん引きだせている、このアメリカにとってのお得感が。

悪いやつと戦った話に、当時イジメてたヤツをくっつけて「俺たち昔から仲間だったよな」って言って、さらにそれが多様性に配慮しているように見せてるんだよ。
狡猾すぎない?
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