ゆめちん

ニトラム/NITRAMのゆめちんのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.0
ニトラム
 
何かとトラブルを起こすマーティン。愛情深い両親はそんな息子を理解できずに困り果て、周囲も何をしでかすか分からない彼を敬遠する。そんなある日、サーフボードを買うためにバイトを始めたマーティンは、ヘレンという女性と出会う。
 
オーストラリア史上最悪の銃乱射事件を起こした青年の物語。冒頭の花火シーンから、常に不安を掻き立てられるような映像の連続で、終始息苦しさを感じる。

敢えて暴力的な描写は排除し、あくまでも主人公の犯罪を起こすまでの "心理状態" と、"社会の問題点" にスポットを当て、色々と考えさせられる内容になっている。

メンタル面の問題を抱え、大人のプライドと子供の幼稚さが混在する主人公。その危うさがスリルという形で伝わり、深い孤独や劣等感からくる被害妄想と、いとも簡単に銃器が手に入る環境が交わる瞬間は、背筋が凍るほどの恐怖を感じた。

ケイラブ・ランドリー・ジョーンズが、主人公の爆発寸前の感情を巧みに見せ、観客の心を掻き乱す演技は、まさしく "怪演" という言葉がぴったり。
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