たにたに

わたしは最悪。のたにたにのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.0
【一瞬の輝きに身を委ねる】2022年98本目

主人公ユリヤとまさにドンピシャ世代。
30という節目を迎えたある女性の自分探しの物語。

映像を通してユリヤを客観的に見ていると、ちょっと痛い人、怖い人に見えてしまう瞬間がある。
ある一面だけを抜き出すとね。
不倫している訳だし、元夫の意見に対して敏感に反応している。
捨てたはずの文章を彼氏に拾われて褒められて逆ギレもしてる。
お腹にできた子どもが流産した時にホッとした表情をしたようにも見えた。

が、いや待った。
自分理解がはっきりとして、社会的模範の中でそれ自体に肯定的に生きていくことが果たして正しいことなのか、そしてそういった意見を突きつけられた時に、はっきりと答える必要があるのか。わからないものは、わからないで良いのではと。

英題「The Worst Person in the World」は、彼女が自分自身に向けている言葉なのかもしれない。

自分が何者で、やりたいことが何なのか、そしてそれを達成したい時にどういう立ち位置に居れば良いのか。
それをまず解決しないと、次に進めない感じがする。
それをわかっていても、一つのレーンに沿って進むことも不安だし、落ち着かない。目的なく色んな列車に乗って、旅に出ても、結局降りる勇気がなくて引き返してしまう。


自分が最悪な人間だと感じるときに、必ず起きていることは他人と比べるということであり、相対的な見方によって自己嫌悪に陥る可能性もあるし、社会的規範を大衆に植え付ける根源ともなる。

そうすると結局一人で生きている方が楽に感じたりする。

考えすぎなければいいじゃんって思うかもしれないが、考えないと、果たして自分理解というのは可能なのでしょうか?

好きな人ができて、走り出す瞬間。自分の周りの時間が止まったような気がして、淡々と過ぎていた時間に一瞬の輝きを見出す。それを、見逃さなければいいんだよね。
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