タスマニア

戦場のピアニストのタスマニアのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
3.5
2021年48本目。

「戦場のピアニスト」というタイトルから、戦争の地でピアノが奏でる美しいメロディひとつで奇跡を起こしたようなピアニストの話なのかなって勝手に思っていたけど、どうやらかなりテイストは違うよう。

実際のところ、ピアニストとしての功績と彼自身の人柄や人望で厳しい戦争の中を生き抜いた様は奇跡とも思った。(実話だしね)

ナチス・ユダヤ人を描く戦争映画は結構えげつないものが多い。
この映画も結構心にくる描写が多くて、全編に渡って結構きつかった。
一方的な銃殺のシーンが多く、恐怖に震える人が一瞬で動かなくなる光景はやっぱりショッキング。
とりわけ印象的だったのは、ドイツ兵が引き金を引いたが弾が装填されておらず、弾を補充されるまで恐怖が長引くあのシーン。
「命拾いしたな」といった主人公的な展開にはならず、淡々と弾を込めて、やはり命を奪われてしまう。ファンタジーでもない現実だから。

市街に転がる死体や死と隣り合わせの人々の姿は結構リアルだったし、エイドリアン・ブロディをはじめとしたキャストのやつれ具合や焦燥具合がすごくて、過酷な撮影だったんだろうなと思う。
オスカー受賞は伊達じゃない。

命の恩人となる人の前で、月明かりの中で演奏するピアノシーンはすごく印象的。
目の前の食料の缶を開けることもままならないほど衰弱した男が美しい旋律を奏でて、まさに「戦場のピアニスト」になった瞬間。
終盤になるまで映像的に結構しんどい部分が多かった分、ここの神秘的なシーケンスは救いでもあった。
命の恩人のドイツ将校も最後に言っていた「生きるも死ぬも神の意思」という言葉も相まって、ピアニストとしてのシュピルマンを生かす大きな力を感じる展開だった。
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