たま

The Son/息子のたまのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.5
誰にでも過去を思い出し、あの頃はよかったとノスタルジーに浸る事がある。
出来ることなら、あの頃に戻りたいと。

NYの敏腕弁護士、ヒュー・ジャックマン演じるピーターの元に、元妻が訪れる。
17才の息子ニコラスが心を病み、父親と一緒に暮らしたいと望んでいると告げる。
新しいパートナーと生後間もない息子と暮らすピーターは、ニコラスを受け入れる。

学校へすら通っていなかったニコラスに、ピーターがかける言葉がとても適切だったとは言えない。
将来の安泰のために、学歴は大事だから、学校へ行くべきだ。
それがニコラスの為だと。

完全に自分の理想を押し付けている。
ありのままの、目の前にいる息子を受け入れようとしていない。

精神的に追い詰めれているニコラスに、質問攻めにするのではなく、相手の言葉に耳を傾け、じっくりと時間をかけて聞くべきだと思い、見ていて苛立った。

ニコラスは決して本心を吐き出すことは無かった。

だけど、きっと他人事だからそんなふうに思うのかもしれない。自分がその立場ならそうできたのだろうか。

親の離婚の影響の大きさを感じる。
温かさと優しさに包まれた世界から、突然、憎しみに満ちた世界へと突き落とされる。
幼い子供に与える影響は計り知れない。
ましてや、繊細なニコラスのような子供にとって。

アンソニーホプキンス演じるピーターの父親。自己中心的で無責任で冷酷な父親をピーターは忌み嫌っていたけれど、結局、同じ穴のムジナだったのか。

これは「ファーザー」の監督の作品。この映画もタイトルは「The Son」だけど、やはりFatherの話だ。

両親は苦渋の決断を迫られる。ただニコラスの言葉を信じたかっただけ。
でも、彼は病気だったのだ。治療が必要だったのだ。

重い重い現実を、突きつけられた映画だった。
たま

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