同時多発テロによって、命を落とした人たちへの、政府の補償プログラム。
そのプログラムの特別管理人に選出されたマイケル・キートン演じる代理人ケン。命に値段をつける仕事。
その値段が、その人の価値になってしまう。でも、それぞれの命にそれぞれにドラマがある。
集団訴訟を避けたい政府との間に立つ代理人の仕事は、いわば汚れ役。
しかしこの手の仕事に関しては、ケンは名うての代理人だ。
確かにケンは奢っていた。
でも計算式は必要だと思う。
ある程度は考慮しないと、公平さを保てない。でもそれだけじゃダメだということ。
計算式じゃなく、AIでもなく、人間が直に接することで、遺族の気持ちにも変化が起きる。
それぞれの人生を知ってもらいたいという思いがある。亡くなった人たちの尊厳を守ることにも繋がる。
ただ、約7000人もの対象者がいると思うと気が遠くなる。
映画で描かれた家族はほんの一部だろう。
もし実話でなければ、アメリカ映画的な予定調和な感動ものと思ってしまっただろう。
やり手のケンが、次第に苦悩し、徐々に被害者家族の声に耳を傾けていく姿を演じた、マイケル・キートンが素晴らしかった(何か賞を与えたいくらい)
そして遺族を統括するスタンリー・トゥッチ、私の持っていた先入観をすっかり打ち破ってくれた、抑え気味の演技もとても良かった。
2人の対峙は見応えありました。