“幻滅”
幻想からさめること。美しく心に描いていた事が、現実には幻に過ぎないと悟らされること。
19世紀前半のパリ、詩人としての才能と野心を持ち合わせたリュシアンは、地方から意気揚々とパリへ向かう。
1人の青年の、野心の果ての物語。
リュシアンは貴族の苗字、母方の姓にとことんこだわるものの、頑として社会は受け入れない。
結局は身分で全てが決まってしまうのか。サロンは謀略策略の世界だった。
そして、新聞がジャーナリズムと呼べるには程遠い、下品で金まみれの大衆を扇動するポピュリストたちの集団だった。そしてそれは世論をも操作する。
芸術に関しても同じ、全ては金次第、金が芸術にものを言う。
リュシアンはその渦中でもがき、そして見捨てられる。
狂乱の時代だったのか、それともその狂乱は現代でも続いているのか。
純粋な者は生きていけないのか。
なんとも言えない気持ちにさせられた。
悪意に満ちたクライマックスに、背筋が凍る。
この時代にこんな小説が書かれ、今にそれが伝えられているのが奇跡のようだ。