ひこくろ

デモニックのひこくろのレビュー・感想・評価

デモニック(2021年製作の映画)
4.1
これはゲームの世界の面白さを映画で表現しようとした作品なんだろうなあと感じた。

この映画は基本、三つの世界から成り立っている。
ひとつは現実の世界。二つめは仮想空間。三つめは夢の世界だ。
このうち、仮想空間の描き方がもう完全にゲームでしかない。
絵面も構図も動きも、見た目がゲームそのもの。
そればかりか、中身までもが映画ではなく、ゲームになっている。

ゲームの世界では何でも起こり得る。人が浮いたり、消えたり、場所が突然変わったり。
そういうことが、そのまんま仮想空間では自然に起こる。
また、ゲームには明確な「目的」があり、それに対するヒントも存在する。
これも、しっかりと描かれる。

ゲームの目的は謎の存在(ボスキャラ)を倒すこと。
ボスキャラを見つけるためには、仮想空間を作り出している母親の過去を探る必要がある、と。

で、ここからがこの映画の独特な面白さになる。
仮想空間で提示されたゲーム的な要素が、今度は夢の世界にスライドされるのだ。
夢の世界は仮想空間とは違い、映像は現実に近い。でも、現れる物は現実感はなくゲーム寄りだ。
ここでまた、物語(ゲームを解くための)ヒントが続々と登場する。
それらを踏まえたうえで、ようやく、現実で起こる奇妙な出来事の話になる。

謎がちゃんと解かれ、仲間が見つかり、次にやるべきことがわかる。
必要な場面ではちゃんとアイテムも手に入るし、わざとらしいほどに仕込まれた展開が続く。
映画として観るなら、こんなにも荒唐無稽で陳腐なものもない。
けれど、仮想空間、夢の世界と段階を経ている観客は、現実をも「ゲーム」として捉えられる。
どんなに嘘くさくあざといシーンも、ゲームとして見るなら、それを進んでいく楽しさがそこに生まれる。

映画好きからしたらきっと駄作だと酷評されるような内容だ。
でも、見方を変えられる、という意味では、とても興味深い奇妙な作品だと思う。
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