ひこくろ

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のひこくろのレビュー・感想・評価

4.6
(原作未読派の感想です)

いろんな要素が詰め込まれ、それらがまとめてドカンとぶつかってくるような、刺激的で衝撃的なアニメだった。

それほど残酷な描写があるわけでもないのに、とことんまで絶望的に見える、冒頭の円盤の出現シーンがまず素晴らしい。
のっけから緊張感をマックスにしておいて、そこからすとんとごく普通の日常を描きはじめるのもいい。
女子高生たちの日常は、本当にたわいなくて、わちゃわちゃしたものなのに、冒頭の円盤シーンが効いているから、そこには得体の知れない不穏感が漂う。
なんでもないシーンがここまで緊張感のあるものになっていることにただ驚く。

物語がとても諷刺的、皮肉的に、現実を浮き上がらせているのにもまたドキッとさせられた。
戦争となったら、相手がどういう存在だろうが、何を考えていようが関係なく、殺されるという事実。
戦時中にも関わらず、どこか他人事でいる一般市民たち。
どれもがいま生きている現実社会の裏面であり、いま僕らが感じている違和感そのものだ。
そして、物語は唐突に、女子高生たちに現実を突きつける。
他人事が他人事でなくなった時の衝撃は、観ているこちら側にまで襲いかかってくる。

ストーリーテリングの上手さも冴えわたっている。
鳳蘭が見た過去の風景は何なのか。
小比類巻くんたちはどんな行動を起こそうとしているのか。
宇宙人の狙いは何なのか。対する政府側の姿勢はどうなのか。
そんなふうに散りばめられた謎が、後編で回収されていくのかと思うと、いまからワクワクして止まらない。

Production +h.の制作によるアニメーションも文句なし。
そして何より、主演を務めた幾田りらとあのが素晴らしくいい。
たぶん、芸能人枠として起用されたんだと思うが、そんなことを忘れてしまうくらいに、小山門出と中川鳳蘭というキャラクターを鮮明に感じさせてくれる。
もう、この二人以外に、この子たちの声はあり得ないだろう、と思うほどにいい。

どこか醒めた目線でいながらも冷静にはなりきれない門出の感じ。
下ネタ全開でバカ騒ぎばかりしている鳳蘭の毒舌ぶり。
それだけでもぴったりなのに、過去編(?)では、それとはまったく違う門出と鳳蘭をまた見事に演じてみせるのだ。
本当、すごかった。

後編を観てみないかぎり、全体としての評価はできないけれど、少なくとも前編は最高の出来だった。
これまでに観たことのないアニメだと思ったし、あらゆる面で凄まじい衝撃を受けた。
言葉がない。
いや、言いたいことは大量にあるのに、言葉にできない。
まごうことなき傑作だと思う。
早く後編を観たい。
ひこくろ

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