タスマニア

沈黙のパレードのタスマニアのレビュー・感想・評価

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
4.5
2022年87本目。

冒頭のシーンから泣いてしまった。
たった数分の映像の中に色々な人の思いやバックグラウンドが見え隠れして、佐織が歌う jupiter も相まって、のっけから痺れた。
この希望に満ち溢れた少女に襲いかかる悲劇を知っているからこそ、心揺さぶられてしまった。

それと同時に、「ガリレオ映画シリーズの新作が始まった!」という個人的な感情の高ぶりも関係していると思う。
個人的オールタイムベスト「容疑者Xの献身」の存在が自分に大きな大きなバイアスをもたらしていることは否定できない。
そう、初めからこの映画は高評価になる前提で見てしまっている笑

結論、大満足の映画だった。
ガリレオのドラマシリーズではなく、映画シリーズがすごく好きな理由が結構詰まっていて、それこそ、「真夏の方程式」よりも「容疑者Xの献身」と地続きのストーリーにも思えてきて、より胸熱だった。
湯川にとっての "親友" への向き合い方が色濃く現れていて、"変人ガリレオ" としての湯川が前面に前に出てこない作りが好きなんよ。

どちらかというと、いつも主役は事件の当事者たち。
もちろん、湯川ならではのアプローチで事件を解決に導く活躍はちゃんとするけど、ドラマ版での爽快感を意図的に抑えていることも、"知覚と快楽の螺旋" を劇中で積極的に使わないスタンスからも感じ取れる。
苦しみながら真実に辿り着くのがええんや。
だから、スローバージョンの BGM の方が聴きたくなる。

今回、ストーリーが特に優れていた、と言う感覚より、全体的にキャストの演技が凄まじかった印象。
ストーリーや展開にも意外性はあって「そういうことか!」という感覚は多少あるものの、基本的には、すごく凡庸で、非常に "人間的" な動機と行動原理に感じられる。
そこが、湯川を主役に据えたガリレオシリーズのコンセプトから考えると、ギャップがあって、自分にとってはプラス。
ある意味終盤の真実のベールが1枚2枚剥がれていく畳み掛けのところは、諸々の要素が重なって、「逆転裁判」みたいだなって感じた笑

キャストについては、蓮沼を演じた村上淳すごい。
「死んで当然の男」と登場人物にも観客にも感じさせる極悪非道の犯人像と同時に、特別な悪のカリスマ性をほとばしらせているわけではなく、ある意味平凡な男としてフラフラ歩いている感じのバランスとか。

あと、飯尾さんね笑
正直めっちゃ良かった。自然だった。
このキャスティングって、どうやって思いついたんやろか。

柴咲コウを見て、内海刑事〜!ってなった!
岸谷刑事も悪くはないけど、やっぱり内海刑事見ると安心する。
柴咲コウも、年を重ねて、また違った魅力的な雰囲気だった。
逆に、あの佇まいで下っ端の刑事的な動きをさせるのは無理あるって笑
現場バリバリと言うより、キャリア組の女性の雰囲気が出てる。

檀れい・吉田羊・柴咲コウとオーバー40とは思えない美人女優たちの共演に「眼福」とか考えながら見てたら、あるとき急に気付いた。
「れい・よう・コウ」って、この三人の名前の音の連続性が美しい。
個人的には吉田羊も大好きだし、今回の役柄も好きな羊さんだから、そこも最高。

岡山天音すごない?
個人的なイメージでは、(色んな意味で)どっちにも転びそうな役を演じるがあるから、惑わされたし、存在感を出しすぎない存在感があった。

それでも、今回は草薙さんが圧倒的にすごかった。
主演、北村一輝の映画だ。
ガリレオの映画は主演が福山雅治じゃなくなるのが、本当に面白い。
疲弊・憔悴した状態を顔色や髭で表現した上で、蒸し暑くてジメジメした気候と映画のテイストが汗ばんだ横顔のアップから伝わってくる。

真実を知った上で、冒頭のシーンを見たい。
そんなわけで、あと何回か映画館で見ようと思う。
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