KouheiNakamura

ブレードランナー ファイナル・カットのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

5.0
それは涙のように、雨のように…。


1982年に公開されたディストピアSFの金字塔・ブレードランナーの監督曰く究極版。細かい映像の修正や台詞の追加を監督自らが行なった、ファイナルカット。

ブレードランナーに初めて触れたのは確か高校生の時。確かディレクターズカット版(完全版)を観た覚えがある。その時はまさかこの映画が全部で5バージョンあるとは思いもしなかった。各バージョンに細かい違いがあり、そのどれもがブレードランナー。いつか全バージョンを観なければ…と思う。そんなブレードランナーの現時点での最終バージョンがこれ。

再見してまず驚かされたのは、その圧倒的なヴィジュアル。常に酸性雨の降り続く2019年のロサンゼルス。暗がりに浮かぶ街並みや未来世界の乗り物の数々を眺めているだけでも陶然としてしまう。また主人公デッカードの部屋の中に時折差し込むサーチライトの明かりも美しく、とにかく美しく完璧な画面設計が全編に溢れている。
物語は無駄な説明を省き、観るものに想像させる余白を多分に含んでいて、結末の解釈は未だに分かれているほど。全体的にはハードボイルドな雰囲気に満ちていて、登場人物たちは白黒ハッキリせず良い意味で人間臭いキャラクターばかり。デッカードの渋さ、レプリカントたちの悲哀がじんわりと胸に沁みるストーリー。
ヴァンゲリスの手がける音楽も完璧に構築された近未来世界を彩る。

あらゆる視点から語り尽くしたくなる、まさに大傑作。全バージョン見比べて、また見直したい。
KouheiNakamura

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