群青

ブレードランナー ファイナル・カットの群青のレビュー・感想・評価

2.7
原作未読。

映画において描かれる《未来》に革新的な影響をもたらした作品。
自分はこの未来像を攻殻機動隊で知った。自分の中では攻殻機動隊っぽい表現していたものに原点がありそれがこれで、なおかつカルトムービーの代名詞であることを後々になって知った。
その作品が去年続編が出るのでこれはいよいよ観なければいけないと思い、鑑賞。

んでなんでこれがカルトたり得ているのかというと、ファンによる解釈の幅が広く深いから。そして複数のバージョンがあるから。バージョンが増えるたびに解釈もまた増えていく笑

現時点でみんなが確認できるのは5バージョン。

1982年北米で公開されたオリジナル版。
全世界的に公開する際に修正した完全版。
1992年にビデオ発売とともに修正した最終版。
2007年のカルトとして人気を不動のものになったおかげで監督の元々やりたかった志向を現すために最新技術を使って修正・編集したファイナル・カット版。
んで1982年に戻って、北米公開する前の試写にあたるワーク・プリント版。


この作品は時系列的には最後のファイナル・カットで、技術向上により当時の時に悔やまれた欠陥を修復しつつ映像を綺麗にしたものだ。監督もこれが一番気に入っている。筈である。笑

主な修正点はアブドゥル・ハサルの尋問シーンのセリフと口がずれているところと、ゾーラが撃たれて窓を割るシーンのスタントのシーン。前者はハリソン・フォードの息子を呼んで顔だけ撮影してはめ込み、後者もゾーラ役を演じた人を呼んで顔だけ撮影したところ。息子がほんと似てる!笑
2007年になって再撮影とかどんだけ笑

あとはハトが飛び立つシーンだけ真昼間だったのを夜に変えたり、色彩を全体的に変えている。

もう一つ大きな点が逃走したレプリカントの人数。
デッカードが逃走したレプリカントを追うというのがこの作品のストーリーだが、その人数は4人。しかし序盤上司から伝えられる人数は6人で1人が死んで残りの4人を説明される。1人足りないのだ。この5人目のレプリカントがファンによりかなり考察された模様。小説の続編では出てくるみたいだが。
このバージョンでは6人逃亡、2人死亡、残りの4人とセリフが変更された。つまり考察していた部分がハッキリ消えてしまった。これはファンによっては悶絶ものだろう。でも監督はこれが正としているので、僕は何も口を挟みません笑


これまでのバージョンでは作品の詳細をレビューしなかったのはこれが本来監督が意図したものであるらしいから。
じゃあ作品の感想を言うと、最初は眠いし退屈だしなんだこれって感じだった笑

印象的なシンセ、アジアフャーチャリズム元祖という意味では確かに革新的・先進的だけど、それ以上に好きという感覚にならなかった。
なんなんだろうな、これは感覚的なところだから。
最初はもっとつまんねえと思っていたけど、2049を観て他のバージョンも観て、ドキュメンタリーも観てからもう一度観ると少し評価が上がった。完成までの道のりが難産だったこと、レプリカントの悲哀が分かってきたからだった。


寿命が4年しかないレプリカント。人間ができないからという理由で、過酷な環境を強いられていたレプリカント。
人間的な生き方、自分の生き方を探すために翻弄する彼らと、彼らを追いかけて殺すブレードランナー。
一体どこからが人間でどこからが人間ではないのか。こういった訴えかけがやっと分かってきた。

ドキュメンタリーで知ったが、この作品で描かれるたくさんの日本語の中で、最初にデッカードが登場するシーンに、1文字のネオンがある。彼の後ろで光っている。崩してあるがその字は源という漢字である。
この漢字が映画で伝えたいことだと監督は語っていた。
深く普遍的な話だからこそ、公開当時興行収入が爆死でも後世までカルトとして残っていると分かった。


その他で感じたのは、レプリカントを使っている、タイレル社。
エイリアンのユタニ、バイオハザードのアンブレラのようにいけ好かなさを感じる。
というかエイリアンは同じが監督だし、エイリアンと同じユニバースにしようとしているらしく、もう監督wwという感じ笑

あとはやっぱりテレビ版攻殻機動隊への影響。
折り紙をするガフは攻殻機動隊のクゼだろうし、デッカードが写真を調べるシーンの調べ方はトグサが最初に笑い男に気がつく写真の調査シーンとほぼ丸被りだった。


そして最近実写化された攻殻機動隊もまんまだった。そろそろというか既にこの未来像も古典になっているだろう。もうこの手の近未来を見せても衝撃は受けない。それほどの作品だということは強く感じた。

ちなみにこの作品の舞台は2019年11月のロサンゼルス。
もう来年だ。
レプリカントはまだ生まれていない。
いや、ひょっとして…
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