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最後の決闘裁判の創のネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

真実が空虚な目をして終わるから、結局人は愚かで残酷な生き物ですね。ってなるのがめちゃくちゃ後味が悪くて良い。

いきなり許可されたもの以外の決闘場内への武器持ち込みは禁止でーす。特に変な呪いかけたやつとか神に反くようなものは絶対禁止です!みたいなことを、
ペットボトルは良いけど缶は紙カップに移してもらいまーす。みたいなノリで言われるから、お。おぅ。。ってまずちょっと引く。

最初のカルージュのお話があまりに退屈だったのだけど、そこは不思議と、ん?なんかコイツがつまんない奴だな。と受け入れられた。
次のルグリのお話でカルージュやっぱりつまんない奴じゃん。となりつつ、あれ?コイツもまあまあ嫌な奴なのでは?となる。
そしてマルグリッドのお話ではやっぱり彼らが自分が思ってるほどの人間では無いのが分かるのだけど、
その頃には同時にもう完全に語り手を信用できなくなっているので、マルグリッドにもヒヤヒヤする。
それぞれがそれぞれのパートで自分の事を良く語っているはずなのに、どんどん信用できなくて胡散臭くなっていくの不思議で面白い。


妊娠の話に歓びとか頂点とかよく分からない概念が入ってくる上に、強姦では妊娠しないのは科学的事実とか言い出すし、
聖職者は罪が軽くなるから宗教裁判に持ち込んだら良いよ。って謎の発想だし、
そもそも訴え出るのを躊躇するような仕組みや罰を社会全体が受け入れているのがすごい。

中世に生まれなくて良かった〜。と思うのも束の間、よく考えたら今もそう大差ない。
人には様々な面があり、コナンくんには申し訳ないが人の数だけ真実はある。

自分が粗野で人望ないのは置いておいて基本世襲の世界で父の仕事を継げなかったのは旧友が領主に取り入ったせい。これも真実。
どう見ても合意じゃないのに自分は確かに好きだったし罪を打ち明け赦しを得たから強姦じゃない。これも真実。
そんなに残酷な結末が待ってるって知ってたら訴えなかったかもしれないけど、どうしたって許すことなんて出来ないから屈辱に耐え引かなかった。これも真実。

もはや何が正解で誰がどうするべきだったかなんてどうでも良くて、起きてしまったことも選択もこの世の中には取り戻せない事があまりに多い。

姑も友人もすごく嫌な感じだったけど、安穏とした生を生き抜く為にはあの姿勢は不可欠だったのかもしれない。
正義感に燃えて周りが見えなくなるのも、できることはちゃんとやったから悪いのはお前って発想も、知らない事がある事を知らない罪も、セカンドレイプをセカンドレイプとも思わない大衆も、現代でも特に何も変わってないと思う。
そう考えると中世だから成立した物語ではなくて現代に置き換えても十二分に成立する物語なのが恐ろしい。

ベンアフが非常に楽しそうで良かった。
ステテコが似合い過ぎてて笑えるし、マットデイモンとの絡みは絶対この人たちカットの後キャッキャしてそう。

アレックスロウザーの気味の悪いシャルル6世もすごく良かった。
確かな親近感も感じるけど完全にこの人危ない。よく食べよく寝てちゃんとして欲しい。感がすごかった。

マットデイモンもアダムドラライバーも良かったと思う。
マットデイモンには空回りもよく似合うし、アダムドラライバーは言われてみればエキゾチックハンサムなのかもしれない。

ただやっぱりジョディカマーがめちゃくちゃかっこよかった。
フリーガイと全然違うのにクラシックな世界もとてもよく似合っていたし、あんな変な髪型でもかわいいのは本当にすごい。
意志の強さや聡明さを感じさせる一方でつまみ食いしてる時のかわいさもあって、ずっと観てたくなった。レイプシーン以外は。

主にマットデイモン目当てで見たはずなのに、マットデイモンが一番印象薄かったな。
でもそれは彼が黒子の方に回ったとも言える気がするからやっぱりマットデイモンも好き。
創