タスマニア

最後の決闘裁判のタスマニアのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
2022年22本目。

なんて、嫌ぁな映画だ。これ褒め言葉。
「ハウス・オブ・グッチ」と公開時期も近いし、微妙に "家柄" の呪い的なテーマも似ている気がして、リドリー・スコットォ・・・ってなった笑
撮影時期はもしかしたら結構違うのかもしれないけど。

そして、どちらの作品でもアダム・ドライバー大活躍。
というか、個人的に思う "アダムドライバーみ" が溢れていた笑
特に今作のジャック・ル・グリは、「もうアダム・ドライバーしか有り得ない」と思うぐらいハマってると思った。
優秀なようで愛憎に溺れる脆さや、繊細なようで鈍感で傲慢な雰囲気とか。

あと、キャストとしては勿論のことだけど、脚本にマッド・デイモンとベン・アフレックコンビが参加しているのはアツい!
「グッド・ウィル・ハンティング」大好き人間からすると、このズッ友共演/共作は胸熱なんだよなぁ。

この映画におけるマッド・デイモンの "脳筋" ぶりは「The 昔」って感じがしたし、ベン・アフレックのピエールはちょっと新鮮な役柄に感じた。

ジョディ・カマーは個人的に「ちょっと癖のある顔立ちがクセになる」枠なんだけど、マルグリッド良かったなぁ。

あと、アレックス・ロウザーが演じる国王のキャラ笑
安全圏から、狂気の世界に興奮する狂王感好き。
顔芸もグッドだった。腹立つ顔してるなーって思ってた笑

キャストや製作陣がやたら豪華だから、そこばっか触れたけど
この映画シンプルに脚本と構成もものすごく完成度高いんだよな。
ストーリーは実際の史実に基づいているので、根幹のプロットを変えられないとすると、その "辿り方" と "見せ方" 一つでここまで面白いものになっているんだなぁって。

宗教と神が法律や倫理すらも支配していた異常な世界において、男性の権力や欲のために女性が消費されていた男尊女卑が蔓延っていた描写は端的に胸糞なんだけど、その中でも3人の人間によって同じ事象の見え方が違うという描写が素晴らしい。
人間はあらゆる事象を自分の先入観や願望のフィルターを通してしか見ることができないんだなって。まさしく「見たいものを見る」

更に、「すごい描写だ」って思ったのは、ジャック・ル・グリとマルグリッドの二人の間に起きた事件をそれぞれの目線で描いたところ。
マルグリッドの部屋に押し入る件や強姦までの流れの中で、真相に直接影響しない部分すらも二人で微妙に違っていたんだ。
カメラワークもあるけど、テーブルを挟んでジャック・ル・グリがマルグリッドを追い詰めるところも、多分回る方向違ってたよね。

事実を歪めるための恣意的な記憶や描写の改竄以外の部分も、そもそも、「人によって物事の見え方が微妙に違う」という普遍的な描写。唸った。

決闘のシーンも迫力あったし、冷酷で残酷で、決着がついてもスッキリしない後味の悪さ含めて、割と傑作級だと思った。
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