タスマニア

LAMB/ラムのタスマニアのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
4.0
2022年93本目。

敬愛するアニメ「BEASTARS」の実写版やん。
そんなことをちょっとだけ思ってしまった笑

個人的に不必要な情報をかなり排除しているのに、それでいて、余白の多い傑作だと思った。
人間のセリフや会話がほとんどないのに、定点のカメラで "ただ写しているだけ" の自然の風景に不穏さやが滲み出てる。
章構成で、テンポを保ってたし、言語による説明ではなく、基本的に映像で説明してくる感じが、とても見やすかった。
とても見やすいから、余計なことを考えずに、じっくり余白・余韻に思いを馳せることができた。

動物のことは大好き。
ただ一方で、「我々は動物(自然)のことを正しく理解できているのか?」という問には自信を持って答えられないな、って思ったり。
「可愛いね〜」って言いながら撫でてる、"その動物" が何を思って、何を考えているか、どんな本能を持って、我々にどんな牙を剥くのか。
人間が理解できている(と勝手に思っている)自然の理の "外側" に触れてしまったことによる報いを受けるシーンは爽快感もありつつも、自戒にもなる。

とはいえ、犬は表情豊かだし、尻尾に感情丸出しだから、「まぁ心が通じ合ってるやろ」って思ってしまう笑
今作では、牧羊犬としてのボーダーコリーが破茶滅茶に可愛かった。
ボーダーコリーって犬の中でも一番知能が高いんよね、確か。

室内で飼われている猫も尻尾がピーンってなっててご機嫌そうだったし、アダに抱えられている姿は尊い。

何より、アダが可愛い。愛おしい。それが悲しいし、罪深い。
言葉を選ばずに言うと、忌まわしい姿でありながら、母性や父性を抱かせる存在が罪深い。
裸のアダを抱え上げるシーンで初めて、アダの下半身が映った時は流石にギョッとした。
どう足掻いても、人間のお尻。自分自身のこれまでの経験や記憶が作り出している脳内の処理装置が、そのビジュアルを拒絶している。
もっと、得体の知れないビジュアルであったり、獣獣しい姿である方が許せる。

繰り返し言うけど、動物と自然はもっと怖いものなんだと思う。
草を与えて、"メェ〜" と泣き、牧羊犬に追い回されて移動する、羊たちも赤い目を光らせている・・・ことだってある。

終盤のシーケンスでマリアは何を思っていたのだろう。
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