さうすぽー

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のさうすぽーのレビュー・感想・評価

4.4
自己満足点 87点

「クレヨンしんちゃん」の映画シリーズ屈指の傑作。
子供向けのアニメですが、しんちゃんの中でもここまで親世代に向けて作られてるのは珍しい気がします。
ひろし役だった藤原啓治さんも初めは「これは本当に子供に受けるのだろうか?」と心配だったそうです。しかしそんな心配は皆無であり、当時の自分も理解出来ない所はあれどゲラゲラ笑いながら楽しんでました。

子供が観ればしんちゃんらしさ全開のシュールなコメディシーンに笑えるし、大人が観れば泣いてしまう。
非常に難しい事だと思いますが、本作はそれを見事に成し遂げています。


初めて「オトナ帝国の逆襲」を観たとき、自分はまだ6才でした。
なので、しんちゃんと比較的年齢が近い頃でしたね。
そして今、お父さんのひろし程の年齢には達してませんが自分は大人になりました。

そんな中、映画の前半で風間くんとねねちゃんがこんな台詞を発しています。
「懐かしいって、そんなに良いものなのかなぁ?」
「大人にならないとわからないんじゃない?」

自分も当時は風間くんみたいに「懐かしい」という事をあまり理解してませんでした。
でも大人になってみると、やはり「懐かしい」って良いものですね...
自分も本作を観て「懐かしい」と感じます。他にも、小学生の時遊んでいたベイブレードや遊戯王カード、中学生の時に遊んでいたゲーム機、その当時聴いていた音楽、本当に数々あります。
そして「あの頃に戻りたい」とも考えてしまう時もあります。

でも、過去を振り替えるばかりで未来を考えないようになるとやはり危ないですし、現実は「アバウト・タイム」という恋愛映画みたいに過去に戻ることは出来ません。
未来を歩み続けるしかない。

そんなメッセージが今観ると凄く伝わってきます。


また、音楽も素晴らしいです。
ラストシーンの吉田拓郎の曲は本作で描かれてるメッセージを代表するもので、"懐かしい曲"ではあるけど「明日も生きていこう」という歌です。
主題歌である小林幸子の曲も素晴らしいです。


ただ、今観ると若干気になる部分も在ったりします。
ひろしが洗脳から溶けた後にみさえが戻り、ケンとチャコに反旗を翻す場面は流石に早すぎたと思います。

また、大人達を洗脳してる「匂い」についてですが、冒頭から既にひろしとみさえ含む親達は「匂い」にかかって洗脳されてたのかもしれません。
ただ、それがどのような方法でかかったのかが曖昧です。
例えば「20世紀博」に行ったらかかるのか、それともテレビ放送を観た視聴者がかかるのか、そこがよく解りませんでした。

若干問題はあるものの、やはりクレヨンしんちゃん映画の中でも素晴らしい作品であるのは間違いないです。

とりあえず今言いたいのは、
「明日からも、こうして生きていくだろう」