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アステロイド・シティのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
4.5
【一言で言うと】
「超次元的“回顧録”」

[あらすじ]
1955年、アメリカ南西部の砂漠の街アステロイド・シティ。隕石が落下して出来た巨大なクレーターが観光名所となっているこの街に、科学賞を受賞した5人の少年少女とその家族が招待される。子どもたちに母親が亡くなったことを言い出せない父親、映画スターのシングルマザーなど、参加者たちがそれぞれの思いを抱える中で授賞式が始まるが、突如として宇宙人が現れ人々は大混乱に陥ってしまう...。

ウェス・アンダーソン監督最新作。相変わらず一度では咀嚼しきれないほどの情報量とセリフ量、そして世界観に溢れていたが、これまでの過去作を振り返ってもあまり見かけなかったような展開で、ある意味ウェス・アンダーソンワールドの“フロンティア”を覗き込んだような感覚に陥った。そう、この映画、かなりややこしい構造なのである笑笑。

前作『フレンチ・ディスパッチ』では、“雑誌”という大まかな媒体を基に細かなオムニバス・ストーリーを展開していくという流れだったのでまだ全体を掴みやすかったのだが、今作では“舞台演劇”を媒体として“カラー”と“モノクロ”、二つのストーリーを軸にして展開していくので、厄介にも観ていて時系列がゴチャゴチャになってしまうのである😅
なんとまぁ初見殺しな映画だこと...

ただそんな分かりづらさがありつつもウェス・アンダーソン監督ならではの世界観がいつもながら炸裂でしたし、なんと言ってもシニカルでユーモア満点のコメディエッセンスが今作に関してはかなり沢山詰め込まれてて、クスッと笑いつつ時には大笑いしてしまうような“無邪気さ”に溢れてたのがとても良かったです!!あのなんとも言えないシュールなボケがホント、クセになるんですよね〜😌

それに相変わらず豪華キャスト陣が勢揃いだし、もはやあの名優アンサンブルに驚くどころか慣れてしまってる自分がいるのが恐ろしい笑。今作でもチョイ役でマーゴット・ロビーやジェフ・ゴールドブラム(笑)が出てたりと名優の“散財”ぶりは健在だし、常連組はもちろん監督の影響力はやはり果てしないなと実感されまくり。いやマジで、ギャラとかどうなってんだよ(・・;)...

とにかく複雑な脚本構造の奥に潜む彼の“遊び心”に思わず釘付けになる、まさにウェス・アンダーソン流“ヌーヴェルバーグ”な自由奔放さが縦横無尽に駆け巡る一本でした!

正直ストーリーの面白さは複雑過ぎて理解に苦しむ要素が多かったが、やはり“相変わらず”の要素が強すぎてクオリティが一切落ちてない上に、トリュフォーの『大人は判ってくれない』などの映画オマージュがかなり散見されたりと、目で楽しむといった要素で104分間持ち堪えれるあのクオリティはマジで凄いとしか言いようがない。

1950年代のアメリカという時代背景ならではの毒っ気濃厚なジョークもですし、多少振り回されつつも不思議とスッキリする後味はまさにウェス・アンダーソンならでは。彼の作品をあまり知らないそこのアナタ、どうです?一度沼ってみませんか😏...