本年度の日本アカデミー賞大本命。
里枝(安藤サクラ)の夫・大祐(窪田正孝)が亡くなるが、葬式にきた家族から全くの他人であることを知らされる。
同じような題材はここ数年でも取り上げられていて、正直またこのテーマかと思ったのだけれど、なかなかどうしてこの映画の引力に引き込まれた。
大祐の正体というミステリ。追いかける弁護士の城戸(妻夫木聡)、そして関わる人のアイデンティティが危うくなっていくサスペンス。古き良き日本映画の匂いを感じる、宿命をめぐる物語に魅せられる。
役者陣が本作に見応えある厚みを加えている。城戸の心情をグラングランに揺さぶる柄本明。そして可愛く、ときに危うい安藤サクラ。プライベートでは義父と嫁の関係という二人の家族力よ。全てが明らかになった後の、安藤サクラの言葉はテーマに対する救いだった。泣いたぜ。
満足感、完成度ともに今年の邦画NO1でしょう。アカデミー賞確実。ミニシアター系をのぞいて、受賞資格を持っていて本作を越える作品って思いつかない。個人的には「さかなのこ」を推したいけれど・・・
・・・でもね、出来が良く満足感があったのもたしかなんだけど、自分の心が震えたかっていうと、これが違うのよね。
映画評論家なら高評価するべきなんだけど、自分は違うから好き嫌いで書いておく。
「おまえ●●だろ」とか相手がいってきたら、黙ってるんじゃなくて、座ってる椅子をぶん投げてやる男がみたいのよ。「●●●の●●だしな」と陰口いってきたら、小さくなるんじゃなくて、その場でクソ野郎の歯を殴ってへし折るところをみたいのよ。「スリービルボード」が好きじゃないのも、やっぱこれが理由だわ。
そういうの求める映画じゃないし、全くのイチャモンなんだけど、頭の悪い自分はやっぱりそっちがみたい。耐えるんじゃなくて突破するところがみたいんだな。自分が絶対に突破なんて行動できないから、映画の中ではそれがみたいのかもしれない。
体調悪かったのか、いい作品なのに頭では評価しても、自分の心の中には入ってこなかった作品。自分が映画に何を求めたいのかわかったことが収穫。
作品自体はとても素晴らしいです。是非みていただきたい。自分も多分体調がよければ絶賛してただろうな。映画は出会い。